膠原病に伴う肺病変は,病態別に分類すると,間質性肺炎(ILD),血管炎,肺胞出血,肺結節(肉芽腫),胸膜炎,気道病変,肺高血圧症などにわけられる。膠原病によって合併しやすい肺病変が異なり,時に肺病変が先行することがある。また,急速進行性の呼吸不全をきたし致命的となる場合もあるため,早期診断と適切な治療導入が必要である。
各種肺病変の診断のためのアプローチは,膠原病を有さない場合と同様である。自己抗体を含め,膠原病に特徴的な所見の有無を評価することが重要である。
基礎にある膠原病により,合併する間質性肺炎の臨床経過が異なる。原則として治療は進行例に対して行う1)。
全身性強皮症(SSc)では,ステロイドの有効性は限定的であり,また,腎クリーゼを誘発するリスクがあることから,中等量以下で免疫抑制薬と併用して治療する。
多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)では,筋炎に対する治療と同様に高用量ステロイドにて導入するが,難治性あるいは再発を繰り返す症例も多く,当初から免疫抑制薬を併用してもよい。一方,抗MDA5抗体陽性の場合,急速進行性間質性肺炎を合併しやすいため,初期から強力な多剤併用免疫抑制療法が試みられる。
関節リウマチ(RA)では,進行性の器質化肺炎(OP)や非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンに対してステロイドが有効であり,中等量~高用量のプレドニゾロン(PSL)が用いられる。一方,通常型間質性肺炎(UIP)パターンの症例は,急性増悪をきたした場合にステロイドパルス療法や免疫抑制薬が選択される。
ANCA関連血管炎(AAV)では,活動性の血管炎を伴っていれば,寛解導入療法として高用量ステロイドとシクロホスファミドの併用療法を行う。
混合性結合組織病(MCTD),全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う肺動脈性肺高血圧症(PAH)では,特発性/遺伝性PAHに準じて,各種肺血管拡張薬を重症度に応じて単剤もしくは多剤併用で用いる。また,原疾患の活動性を加味して免疫抑制療法を試みる。一方,SScでは,PAHに肺静脈閉塞症(PV OD),左心系疾患に伴う肺高血圧症(PH),間質性肺炎に伴うPH,慢性血栓塞栓性PH(CTEPH)などが加わった混合病態がみられる。肺うっ血を誘発したり,換気血流不均衡を増悪させたりする可能性があるため,個々の症例の病態に応じて肺血管拡張薬の適応を検討する2)。
気管支拡張症やびまん性汎細気管支炎(DPB)様病変に対しては,膠原病を合併しない場合と同様に少量マクロライド療法が試みられる。
胸膜炎の治療はステロイドが中心であり,中等量PSL(0.5 mg/kg/日)で多くは寛解する。大量胸水貯留を認めた場合には,胸腔ドレナージを必要とする。
急速に進行し予後がきわめて悪いため,早期からステロイドパルス療法を含めた大量ステロイドに加え,シクロホスファミド間欠静注療法などの免疫抑制薬,血漿交換療法の併用も積極的に考慮する。
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