高血圧症治療薬を用いた臨床研究に関する一連の問題が日本国内で行われてきた臨床研究のあり方を見直す端緒となり,厚生労働省の「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」でも議論が行われたことは記憶に新しい。この検討会に資する海外調査を行うため,厚生労働科学研究費補助金事業「臨床研究に関する欧米諸国と我が国の規制・法制度の比較研究」と題した英,仏,米における臨床研究のルールの調査が磯部班(研究代表者:慶應義塾大学大学院法務研究科・磯部 哲教授)によって実施された。磯部班は法律家,研究倫理専門家,生物統計家,薬学研究者などからなる研究班である。
筆者は研究協力者として調査に同行したので,本稿でその調査結果の一部を紹介したい。なお,調査結果の概要は「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」の第3回と5回で発表され,当該検討会のウェブサイト1)で資料が閲覧できる。
米国および西欧は今でこそ「臨床研究大国」であるが,過去から現在に至るまで臨床研究にかかる様々なスキャンダルを経験した結果,その対応として法的規制や運用などを見直してきた歴史がある。いずれの国も,既存の国内規制,臨床研究の歴史的経緯や実態,国民性などとの関連性から,独自の制度をつくり上げている。そのため,ひとくちに「欧米」と言っても,西欧諸国と米国の間でも規制は様々な面で異なっている。
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