家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は,LDL受容体と関連する遺伝子変異による疾患で,常染色体優性(顕性)遺伝形式をとる。頻度は,FHヘテロ接合体で,200~300人に1人存在すると推定される。FHの動脈硬化の進展はきわめて速く,未治療では男性30~50歳,女性50~70歳で虚血性心疾患を発症するが,さらに若年から生じる危険性も言われている。FHホモ接合体は,動脈硬化性がより急速に進行し,若年死することがある。すなわち,早期発見が重要となる。また,必ず家族解析を行い,他のFH患児(者)を発見していく。FHの動脈硬化の進行は,スタチン内服により抑制できることが明らかにされており,欧米では小児期から積極的な治療が行われている。
LDLコレステロール(LDL-C)140mg/dL以上および祖父母までの家族歴(FHあるいは早発性冠動脈疾患)の両者を満たす場合,FHと診断する。検査は複数回行い,確認する。遺伝子解析は必須ではない(変異が同定されるのは半数程度である)。皮膚黄色腫の存在はFHホモ接合体が疑われる。
鑑別として,母乳性高コレステロール血症とリソソーム酸性リパーゼ欠損症がある。また,黄色腫が目立つ疾患としては,植物ステロールが高値となるシトステロール血症,血清コレスタノールが高値となる脳腱黄色腫症がある。続発性脂質異常症はもちろん除外する。
FHと診断されれば,できるだけ早期に食事を含めた生活習慣を調査し,その改善を指導する。
1日の摂取エネルギーは,肥満でなければ各年齢,体格に応じた通常量とする。栄養バランスは,脂肪エネルギー比20~25%,炭水化物エネルギー比50~60%とする。コレステロール吸収には個人差があるが,飽和脂肪酸,トランス脂肪酸,コレステロール摂取は控える。小児では厳格な食事療法が難しい。厳格すぎるのもよくない。伝統的な和食を中心として,種々バランスよく摂取することを指導する。食塩摂取過剰にも注意する。
適正な体重を維持することが重要である。個人の肥満評価には,標準体重を用いる“肥満度”がよい。肥満の場合,摂取エネルギーが必要量を超えているので,通常量に戻す。野菜摂取を多くし,飲み物や味付け,調味料にも注意する。同時に体を動かす習慣もつける。高度な肥満では摂取エネルギーを制限する必要もある。
重症例では循環器の精査を行ってから指導する。楽しく継続できることが重要となる。
喫煙はすべての動脈硬化性疾患に対する独立した主要なリスクである。生涯を通じて喫煙しないことを徹底する。また,家族や周囲の禁煙も必要である。
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