徐脈に伴う症状・徴候がある「症候性徐脈」の場合には緊急治療が必要となる。心停止への移行を防ぐためにも,薬剤治療と同時に経皮ペーシングを考慮し,必要に応じてその後の経静脈ペーシングにつなげる必要がある。
薬剤治療としては,アトロピンの静脈内投与と,ドパミンもしくはアドレナリンの持続静脈内投与が行われる。それでも症候性徐脈が軽快しない場合には,経皮ペーシングの適応となる。また,経皮ペーシングは長時間使用できず,その後は経静脈ペーシングに移行することが多い。
症候性徐脈ではない場合でも,モビッツ型Ⅱ度房室ブロックやⅢ度(完全)房室ブロック(や高度房室ブロック)の場合には,直ちに経皮ペーシングを考慮する(パッドを装着して症候性徐脈や心停止になった場合でも,直ちに経皮ペーシングが開始できるようにスタンバイしておくことを考慮する)。
日本蘇生協議会の「JRC蘇生ガイドライン2015」の徐脈に対するアルゴリズムを図1 1)に示す。
徐脈に伴う症状・徴候がある「症候性徐脈」かどうかの判断が非常に重要である。
持続する胸痛,呼吸困難,意識状態の悪化,失神などは症候性徐脈のサインである。また,めまい,ふらつき,易疲労感,脱力感,嘔気といった症状で受診されることもあるので,注意が必要である。
症候性徐脈と判断された場合には,直ちにバイタルサインを確認して,必要があれば直ちに緊急時の処置に移行する。
なお,徐脈の背景には薬剤が関与していることがあるので,β遮断薬やジギタリス製剤,カルシウム拮抗薬(ジルチアゼムやベラパミル)などの徐脈を生じやすい薬剤の内服の有無に関しても確認することが重要である。
徐脈は一般的に心拍数(脈拍数)60回/分未満と定義される。橈骨動脈などで脈拍数を確認すると同時に心電図モニターを装着して,心拍数を確認する。血圧を測定して血圧低下(ショック)の有無を確認する。また,SpO2モニターを装着して低酸素血症の有無を確認する。
末梢循環不全を呈する血圧低下(ショック)の徴候(意識状態の悪化,皮膚の冷感湿潤,冷汗など)がある場合には症候性徐脈と判断して,直ちに緊急時の処置を開始する。
徐脈に伴う心不全を合併している場合には,肺水腫や胸水貯留に伴う呼吸音の異常や,心負荷による心音の異常などを認める。
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