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四肢外傷[私の治療]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.65

宇田川和彦 (慶應義塾大学医学部救急医学教室)

登録日: 2021-05-01

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  • 救急領域における四肢外傷は初期評価が肝心であり,「life threatening injury」「limb threatening injury」を見逃さないようにすることが重要である。

    ▶病歴聴取のポイント

    四肢外傷における病歴聴取の目的は,受傷のエネルギーの大きさ,受傷メカニズムを把握することである。特に高エネルギー外傷では,一見四肢外傷単独とみられる場合であっても,他部位の外傷が潜んでいる可能性があるので,注意を要する。また,受傷メカニズムから骨折形態を把握できることが多くあるので,本人の記憶があいまいな場合には,周囲目撃者から情報を集める。高齢者の場合には,複数回の転倒により外傷が生じることもあるので,過去の転倒歴についても十分聴取する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    四肢外傷単独でも出血性ショックになることがある,すなわちlife threatening injuryになりうるので,ショックと認知したら,早急に蘇生を開始すべきである。特に高齢者の場合には,低エネルギーの外傷でもショックになりうることがあるので,注意が必要である。

    【身体診察】

    limb threatening injuryになりうる血管損傷,コンパートメント症候群を見逃さないことが重要である。

    血管損傷を伴う四肢外傷は,早期に血行再建を行わなければ,切断に至る可能性が高い。身体診察は,まず末梢動脈の拍動を触知する。上肢であれば橈骨動脈と尺骨動脈,下肢であれば足背動脈と後脛骨動脈で拍動を触知するのが望ましい。明らかに拍動が触知でき,健側と比較しても変わりなければ,血管損傷は否定的である。しかし健側よりも弱い,明らかに触知できない場合には,血管損傷を疑い精査を行うべきである。また,神経損傷があった場合には,血管損傷が潜んでいる可能性があるので,神経評価も併せて行う。

    コンパートメント症候群の初期症状は痛みであり,通常の四肢外傷では想定できない強い疼痛があった場合には疑うべきである。疼痛に加え,手指もしくは足趾を他動的に底背屈させた際に疼痛(passive stretch pain)が誘導されるか否かを評価する。

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