薬剤溶出性ステント(DES)留置後に開始する抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、疾患ごとの虚血再発リスク別で異なるものの、一定期間後は単剤に変更するのがコンセンサスとなりつつある。これまではアスピリン単剤が一般的だったが、クロピドグレルのジェネリックが汎用される現在、いずれを選択すべきか。そのような疑問に応えるべく、韓国で5000例以上を登録したランダム化試験“HOST-EXAM”が実施された。バーチャル開催となった本年の米国心臓病学会(ACC)学術集会にて、ソウル大学校(韓国)のHyo-Soo Kim氏が報告した。
1次評価項目全体ではクロピドグレルのほうが良好だったものの、死亡では逆傾向を示していた。
HOST-EXAM試験の対象は、DES留置後6~18カ月間、虚血・出血イベントのいずれもきたさなかった5438例である。倫理的な要請以外、除外規定は特に設けられていない。
平均年齢は64歳、34%が糖尿病、61%が高血圧、69%が脂質異常症、13%が慢性腎不全を合併し、16%に心筋梗塞既往があった。
これら5438例は、アスピリン100mg/日群とクロピドグレル75mg/日群にランダム化され、非盲検下で観察された。
24カ月間観察の結果、1次評価項目の「死亡・心筋梗塞・脳卒中・急性冠症候群(ACS)による入院・大出血」の発生率は、アスピリン群:7.7%、クロピドグレル群:5.7%となり、クロピドグレル群における有意なリスク低下が認められた(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.59-0.90)。このリスク低下は、「年齢」や「性別」、「各種合併症」の有無だけでなく、「喫煙歴」の有無別に検討しても一貫していた。なお、CYP2C19遺伝子多型は調べていないため、サブグループ解析は行われていない。
これら1次評価項目を個別にみると、クロピドグレル群ではアスピリン群に比べ、脳卒中(0.5 vs. 1.0%)、ACS入院(2.5 vs. 4.1%)、大出血(1.2 vs. 2.0%)は有意に低リスクとなっていた一方、死亡(1.9 vs. 1.3%)リスクは高い傾向にあった(HR:1.43、95%CI:0.93-2.19)。
この結果の長期妥当性を確認すべく、Kim氏らはこのコホートをさらに10年間観察する“HOST-EXAM Extended study”を開始したという。
本研究は韓国保健福祉部、ならびに製薬会社4社(試験薬販売社含む)コンソーシアムから資金提供を受けて実施された。また報告と同時に論文が、Lancet誌ウェブサイトに掲載された。