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皮膚・粘膜カンジダ症[私の治療]

No.5066 (2021年05月29日発行) P.42

下山陽也 (帝京大学医学部附属溝口病院皮膚科)

登録日: 2021-05-29

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  • ヒトの粘膜や皮膚,消化管に常在するカンジダ属真菌による感染症であり,病変部位や臨床症状から様々な病型に分類される。原因菌の多くはCandida albicansである。本症は健常者にも発症するが,糖尿病,膠原病,HIV感染症,血液疾患,免疫抑制薬・生物学的製剤の使用歴などを有する患者に日和見感染症として発症することも知られている。本症を繰り返す場合は基礎疾患や患者背景等の検索が必要である。

    ▶診断のポイント

    本症は視診のみで確定診断することはできない。確定診断は,病巣から採取した検体(鱗屑,白苔など)から直接鏡検法で仮性菌糸や密生する分生子を確認することが必須である。カンジダ属真菌は常在菌であるため,培養検査のみで確定診断をすることはできず,カンジダ属真菌が分離培養された場合は臨床症状と直接鏡検法の結果を合わせて判断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療開始前に確定診断が必須である。確定診断後,抗真菌薬による治療を行う。2019年にわが国におけるガイドラインが改訂され1),本症に対する治療に関していくつかのclinical questionが作成された。本症においては,抗真菌薬の外用療法・内服療法ともにエビデンスレベルが高く,有効性が示されている。

    本症においては薬剤の選択も重要であるが,患部の環境を整えることなど,患者指導が重要である。本稿ではその一例を述べる。患者の基礎疾患,生活習慣,職業,環境等を考慮して指導することが肝要である。

    ほとんどの病型で,アゾール系抗真菌薬による治療が基本となり,およそ2週間の外用療法で治癒する。皮膚カンジダ症では,患部のびらんや炎症所見が強い場合は,抗真菌薬外用による接触皮膚炎を誘発することが多いため,まずは皮膚保護剤やステロイド外用などで局所の炎症を改善させてから抗真菌薬の外用を行う。罹患部位が広い場合は抗真菌薬の内服療法も検討する。

    カンジダ性間擦疹では,発汗,尿や便によるおむつの汚染,長期臥床,拘縮した部位など患部の不潔や多湿が誘因となる。患部を清潔に保ち,多湿な環境を避けるよう患者指導を行う。

    カンジダ性指間びらんは皮膚の密着しやすい第3指間に好発し,カンジダ性爪囲爪炎では手荒れで爪上皮が消失した部位に水分が残って多湿な環境となり発症しやすい。水仕事の制限や,水分をしっかり拭き取ることを指導する。

    爪カンジダ症には,イトラコナゾールの連日内服療法を行う。漫然と内服治療するのではなく,正常な爪甲の伸び具合を確認しながら治療する。爪カンジダ症は爪白癬に比べ手の爪に発症することが多く,6カ月ほどで正常な爪甲となることが多い。しかし,爪甲剝離を伴う場合は,薬剤の爪甲への移行が悪いため治癒に時間を要することがあり,適切な爪切り処置が必要である。爪カンジダ症は,爪白癬や外傷に引き続き腐生的にカンジダ属真菌が感染することもあり,爪白癬に合併した場合は,イトラコナゾールの連日内服療法では改善が乏しいこともある。難治の場合は繰り返し直接鏡検法や培養検査を行うことが重要である。外傷等による爪の変形が高度な場合は抗真菌薬による治療をしても変形が残ることがあるため,治癒判定は臨床症状の改善だけでなく,真菌学的検査の結果を合わせて判断することも重要である。

    口腔カンジダ症にはミコナゾールゲル,アムホテリシンBシロップなどの局所治療を行う。重症例や難治例ではイトラコナゾール内用液での治療を行う。

    カンジダ性口角びらんは,唾液による刺激が誘因となることが多い。口囲を清潔に保ち,抗真菌薬の外用を行う。

    外陰腟カンジダ症にはアゾール系抗真菌薬の腟内投与を行う。重症例,難治例や腟錠の使用が困難な患者にはフルコナゾールの内服を検討する。カンジダ性亀頭炎・亀頭包皮炎には皮膚カンジダ症と同様にアゾール系抗真菌薬の外用療法が有効である。これらの性器カンジダ症は性感染症の側面があり,パートナーに性器カンジダ症の症状がないか確認し治療することが再発防止にも重要である。

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