裂肛の手術術式は複数あり,最適な術式の選択が必要である。そのためには正確な術前診断を行うことが重要である
裂肛の手術では,肛門の拡張が過度に行われれば便やガスの失禁(incontinence)を起こし,不十分であれば裂肛の再発をきたすため,最小限の侵襲で最大の効果を発揮できるよう心がける
裂肛は主に急性裂肛,慢性裂肛,随伴性裂肛,症候性裂肛の4つに分類される。急性裂肛は肛門管上皮の発赤,びらん,浅い裂創などであり,排便状態の改善を主とした保存的治療が行われる。しかし,痛みを繰り返すと内肛門括約筋が過緊張をきたし,肛門管静止圧が高くなるとともに肛門管上皮が虚血状態となり,裂肛の再発や慢性化の原因となる1)。
慢性化し難治性肛門潰瘍となった症例や,肛門ポリープなどの付随病変を併発し,器質的肛門狭窄をきたした症例は外科的治療の適応となる(図1)。付随病変がなくても,内肛門括約筋の過緊張や攣縮による機能的肛門狭窄を認める場合は相対的適応である。なお,痔核の脱出により裂創を生じる随伴性裂肛では痔核切除術が,Crohn病や結核など全身疾患による症候性裂肛は原因疾患の治療が主体となる。
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