尿道炎は,尿道から入った原因微生物が尿道粘膜に付着し発症する。そのほとんどが性感染症(sexually transmitted infection:STI)である。治療内容が異なるため,淋菌性尿道炎と非淋菌性尿道炎(クラミジア性,非クラミジア性非淋菌性)の鑑別が重要となる。また,STIであるためパートナーの治療も同時に行うことが肝要となってくる。稀ではあるが,淋菌およびクラミジアでは精巣上体炎へと進展することがあるので注意を要する。
排尿時痛や尿道分泌物の増加を認め,発熱は認めない。淋菌性尿道炎は1週間以内の潜伏期間で急激に発症し,強い排尿時痛・膿性の尿道分泌物を認めることが多い。一方,非淋菌性尿道炎は2週間前後の潜伏期間があり緩やかに発症し,症状に乏しく尿道分泌物は漿液性であることが多い。
初尿の白血球の有無を確認する。また,淋菌およびクラミジアは初尿の核酸増幅法で診断が可能である。淋菌性尿道炎の2~3割でクラミジアが重複感染しているため,同時検出の核酸増幅法検査は必須である。淋菌性尿道炎では,尿道分泌物の塗抹標本で白血球に貪食されたグラム陰性双球菌が観察され,初尿沈渣で多数の白血球とともに淋菌が検出できる。
非クラミジア性非淋菌性尿道炎は保険収載された診断法がなく確定診断ができないため,除外診断となる。その中で,原因微生物として確定しているのはMycoplasma genitaliumとトリコモナスである。トリコモナス性尿道炎は,尿沈渣の鏡検で波動のある原虫を観察できることがある。
淋菌性尿道炎に対して有効とされる薬剤はセフトリアキソンナトリウム水和物(CTRX)とスペクチノマイシン塩酸塩水和物(SPCM)のみである。しかし,淋菌性尿道炎の約3割が淋菌咽頭感染を有していると報告されており,SPCMは咽頭感染に対して効果が乏しいため第一選択はCTRXとなる。クラミジア性尿道炎に対しては,マクロライド系,テトラサイクリン系,キノロン系のうち抗菌力のあるものを投与する。
問診で尿道炎が疑われたら初尿もしくは尿道分泌物の鏡検を行い,淋菌が疑わしければCTRXを投与,淋菌を示唆する所見が乏しければクラミジアを想定した治療を開始する。治療開始前に淋菌およびクラミジアの同時検出核酸増幅法検査を提出し,再診時に確認を行う。重複感染を認めた場合は追加でもう一方の治療も行わなければならないため,再診の重要性を患者に説明する必要がある。治療効果判定は2~3週間後に再度核酸増幅法を行うことが望ましい。同時にパートナーへの治療を行うとともに,治療期間内の性交渉時(オーラルセックスを含む)はコンドームを使用するよう,指導をする。
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