高IgG4血症と腫大した罹患臓器への著明なIgG4陽性細胞浸潤,花筵様線維化や閉塞性静脈炎を病理組織学的特徴とする,原因不明の全身性,慢性炎症性疾患である。涙腺・唾液腺および膵が二大罹患臓器であり,それ以外にも下垂体,眼窩内,甲状腺,肺,乳腺,胆管,腎,大動脈,後腹膜腔,前立腺などにも病変を形成することがある。高ガンマグロブリン血症,低補体血症などの免疫異常を伴うことがある1)。
診断は,厚生労働省研究班による改訂包括診断基準(2020年)2)に従う。それにより確定診断に至らなくても,臓器別診断基準(IgG4関連涙腺・唾液腺炎,自己免疫性膵炎,IgG4関連下垂体炎,IgG4関連眼疾患,IgG4関連呼吸器疾患,IgG4関連硬化性胆管炎,IgG4関連腎臓病,IgG4関連大動脈周囲炎/動脈周囲炎および後腹膜線維症)に照合して,確定診断することも可能である。必ず除外診断を丁寧に行うことが重要である。
治療はステロイドによるため,治療前にその長期投与に対するリスク評価(感染マーカー確認,耐糖能・脂質代謝・血圧評価,眼圧測定,骨塩定量など)を行っておく。
造影CT,ガリウムシンチグラフィーもしくはFDG-PET撮影などにより全身の臓器病変の評価を行う(FDG-PETは保険適用外)。総胆管狭窄による黄疸,腎盂病変や尿管狭窄による水腎症,大動脈瘤形成を認める場合には,これらに対してのステント留置を優先的に実施する。複数の臓器病変を認める場合には,絶対的治療適応と考える。寛解導入のための初期量をプレドニゾロン換算0.8mg/kg/日に設定する。単一臓器病変の場合には,相対的治療適応と考え,慎重に経過観察を行うか,またはプレドニゾロン換算0.6mg/kg/日で治療を開始するか,患者と相談して方針を決定する。しかし,眼窩内病変が視神経を圧排し,視力・視野障害を呈している場合(視神経周囲炎)には,単一臓器病変であっても絶対的治療適応と判断する。治療を開始した場合には,初期量を4週間継続し,良好な治療反応性を確認した上で,2週間ごとに10%ずつ漸減していく。血清IgG4値や,治療前に低補体血症を呈している症例では血清補体価をモニタリングしながら維持量を設定する。
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