【質問者】
林 昌浩 新中道皮ふ科クリニック院長/ 東北医科薬科大学医学部皮膚科臨床教授
【爪部ボーエン病では粘膜悪性型HPVが検出されやすい】
HPVはこれまでに200種類以上報告されており,イボの原因となる良性タイプから子宮頸癌の原因となる悪性タイプまで様々です。特にHPV16型などの粘膜悪性型は有名であり,現在のHPVワクチンもHPV16型を中心とした粘膜型をターゲットにしています。
HPVは子宮頸癌のほか,中咽頭癌,肛門癌などの原因となりますが,皮膚癌の原因にもなります。外陰部や手指のボーエン病からHPVが検出されたという報告はありますが1)2),皮膚癌とHPVの関連性はあまり注目されていませんでした。そのような中で,最近,爪部ボーエン病から粘膜悪性型HPVが高頻度に検出されることが明らかになりました3)。
ボーエン病は,有棘細胞癌(皮膚の扁平上皮癌)と同様に表皮有棘層の細胞ががん化して生じる表皮内癌の状態です。通常は高齢者にみられ,体のあらゆる部分に出現します。ボーエン病のすべてがHPV関連ではなく,HPV関連の爪部ボーエン病は通常のボーエン病といくつか相違点があります。前者では30歳代の若い症例もあり,爪甲色素線条という爪に縦線が入った症状を呈する例がみられます。メラノーマとは爪甲の破壊を伴う点が異なります。罹患指も左第3指,右第1~3指に多いのが特徴です。海外の報告が主体ですが,パートナーにおける病変,子宮頸癌の既往なども報告されており,患者内およびパートナーとの間での感染が疑われます。
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