私たち小児科医は、主に16歳未満の小児期に発症する疾患を専門に診療しています。小児期に慢性疾患を発症した患者の中には、成人期にも治療の継続が必要となる患者もおり、その際には成人期医療への移行が勧められています。今回は、小児腎臓外来を担当する小児科医の立場からみた現状をご紹介したいと思います。
2014年以降、日本小児科学会や小児腎臓病学会および日本腎臓学会から、移行医療に関する提言が発表されています。その目的は、小児期発症疾患を持つ患者が、成人期に適切な医療の提供を受け、成人としての役割や機能を受け入れられるようにすることです。
しかし実際には、内科をはじめとする成人診療科への転科がうまく進まないことがあります。「慣れている先生がいい」「治療が変わるのが不安」「長期経過を理解してもらうのが大変」「本人(子ども)に治療をまかせるのは心配」などの理由で、小児科での医療継続を希望する患者やその保護者は少なくありません。これは、小児科スタッフとの強い精神的結びつきや、患者の保護者や医師に対する依存、保護者の患者への過度な干渉が原因と考えられます。一方、小児科医は、患者に親しみを感じ「成人期も自分が診療を続けたい」と思う反面、患者の成長過程で治療の主体を保護者から患者に変換する必要性や、成人特有の疾患や妊娠・出産に関して適切な医療を提供することの難しさを感じています。
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