【質問者】
菊地栄次 聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科学教授
【全摘適応症例にも温存療法の選択肢を提示。温存適格症例では長期成績良好】
膀胱全摘除術+尿路変向術の問題点は,大きい手術侵襲と尿路変向に伴うQOLの低下です。これらの問題点を解決する治療法として経尿道的腫瘍切除術+化学放射線療法による三者併用膀胱温存療法が開発されました。治療方法の大きな相違から膀胱全摘除術とのランダム化比較試験が成立しなかったため,エビデンスレベルIではないものの治療成績の蓄積から,三者併用膀胱温存療法は適切な症例選択の下で膀胱全摘除術と同等のがん特異的生存を達成しつつ良好なQOLを維持すると報告されています。さらに根治性を高める目的で,経尿道的腫瘍切除術+導入化学放射線療法+膀胱部分切除術/骨盤リンパ節郭清術による四者併用膀胱温存療法が都立駒込病院を含むいくつかの施設で行われています。
膀胱温存療法は膀胱全摘除術と対立する治療概念ではなく,全摘をせずとも根治可能な症例を適切に選択し,根治的な温存治療を提供することが肝要と考えています。温存療法で根治を期待できる症例は,三者併用療法の場合は上皮内癌と水腎症がないcT2N0M0症例です。四者併用療法では,上皮内癌を含むがんが膀胱腔内で限局的(面積で1/4未満)かつ膀胱頸部に及ばないcT2-3N0M0症例のうち,導入化学放射線療法で浸潤癌の残存がない症例を膀胱部分切除術の対象としています。
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