わが国では近年、「12~30人に1人」がLGBTQ(Lesbian、Gay、Bisexual、Transgender、Questioning)だというアンケート調査結果が報告されている。またLGBTQ人口が1100万人を超える米国ではすでに、LGBTQの心血管系(CV)リスクが注目され始め、米国心臓協会(AHA)は昨年、ステートメントを公表した。さて、LGBTQのCVリスクとして看過できないのが高血圧である。13日からオンラインで開催されているAHA学術集会では、性的少数者の感じるストレスと高血圧の関係がChicago Health and Life Experience of Women’s(CHLEW)スタディから報告された。報告者のBilly A. Caceres氏(コロンビア大学、米国)は、LGBTQ高血圧を予防する新たな介入の手掛かりになることを期待している。
同氏らが解析対象としたのは、シカゴ在住の同性愛/両性愛の女性410例中、2010~12年の登録時に高血圧の診断歴のなかった369名である。うち、14.9%が2017~19年のフォローアップ時には高血圧との診断を受けていた(高血圧発症)。なお、高血圧診断の有無はいずれも自己申告である。
これらを対象に、登録時に評価した「性的少数者ゆえのストレス」(sexual minority stressor)と高血圧発症の関係を調べた。
その結果、「自らの同性愛嫌悪」(internalized homophobia)、「性的少数者ゆえにステレオタイプに見られるストレス」(stigma consciousness)、「性的嗜好に起因する差別」(sexual orientation-based discrimination)のうち(いずれも個別スケールを用いてポイント評価)、高血圧発症例でポイントが有意に高値だったのは、「自らの同性愛嫌悪」のみだった。
また、年齢や人種、家系、教育、同性愛/両性愛、健康保険、自己申告によるBMI、喫煙状況で補正後、ポイント1標準偏差増加に伴う高血圧発症オッズ比が有意に高かったのも「自らの同性愛嫌悪」のみだった(1.50、95%信頼区間[CI]:1.05-2.10)。なお、「ステレオタイプに見られるストレス」は0.80(0.52-1.23)、「性的嗜好に起因する差別」は1.13(0.76-1.61)だった。
Caceres氏は、「自らの同性愛嫌悪」に対する有効な介入はすでに報告されているとした上で、それらの介入による高血圧発症抑制を検討すべきだと述べた。
CHLEWスタディは、米国立アルコール乱用・依存症研究所から資金提供を受けている。