血清マグネシウム(Mg)濃度は,通常の血液生化学スクリーニングで測定されることは少なく,神経・筋症状,心電図異常などがみられる場合に測定され,判明することが多い。薬剤,内分泌疾患による低マグネシウム血症では重症例がみられるが,軽度のものはICU患者でしばしば認められ,予後と関連する1)。また,透析患者の低マグネシウム血症は生命予後と関連することが示されているが,その治療が予後改善につながるというエビデンスは乏しい。
テタニー,痙攣などの神経・筋症状,QT延長,不整脈などの心電図異常,低カルシウム血症,低カリウム血症の電解質異常がみられる場合に,必ず血清Mg濃度を測定する。低マグネシウム血症の原因は消化管からの喪失,腎からの喪失のいずれかであり,その鑑別にFEMg%を測定する。2%以上であれば腎からの喪失が疑われる。原因としては薬剤性(下剤の乱用,サイアザイド系・ループ利尿薬,プロトンポンプ阻害薬,EGF受容体阻害薬など)が多くみられ2),常用薬の確認がきわめて重要である。アルコール中毒,摂食障害も原因としては多く,病歴聴取が診断に必須である。その他,稀に遺伝性疾患による場合があるが,日常診療で遭遇することはほとんどない。
テタニー,不整脈,痙攣のような症状を伴う重症の低マグネシウム血症がみられる場合は,経静脈的にMg補充を行う。このような症状がなく,原因となる薬剤(利尿薬,プロトンポンプ阻害薬),あるいはアルコール多飲,慢性の下痢などの原因が明らかな場合はその中止,あるいは治療を行う。このような場合は経口的なMg補充を行う。酸化Mgは緩下剤であり,補充には不向きである。
低マグネシウム血症は低カリウム血症を伴うことが多い。低カリウム血症がある場合は,下痢などの症状を比較的生じにくいアスパラ®配合錠(L-アスパラギン酸カリウム・L-アスパラギン酸マグネシウム)が経口補充の第一選択となる。
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