修正ランキンスケール(mRS)は、脳卒中後の機能回復指標として最も汎用されている。しかし、患者目線の生活自立度まで適切に評価しているだろうか―。そのような観点からSIS-ADL(Stroke Impact Scale-Activities of Daily Living)の有用性を検討した結果が、9日から米国ニューオーリンズで開催された国際脳卒中学会(ISC)において、Steven C. Cramer氏(カリフォルニア大学、米国)により報告された。mRSの代替、あるいは補完評価法としての有用性が示唆された。
SIS-ADLは、脳卒中に特異的な健康状態の評価法(SIS)から日常生活動作(ADL)に関する10項目*を抽出した質問票である。それぞれの項目につき、患者本人が5段階で評価する(困難なほど低ポイント)。今回Cramer氏は脳卒中後の機能評価をmRSとSIS-ADL間で比較した。
*食事、着衣、入浴、爪切り、トイレ、排泄(大小)コントロール、家事(軽重)、買い物。
対象となったのは、脳梗塞・脳出血発症後2~10日の763例中、90日後に評価可能だった511例である。平均年齢は62.3歳、急性期NIHSS平均は4と、基本的に中等症以下の患者が多かった。
さて90日後のmRS平均値は2、SIS-ADLは87.5ポイントで、両者間には良好な負の相関が認められた(r=-0.74、P<0.0001)。
ただし、SIS-ADLのほうがより詳細に、生活自立度を評価できる可能性も示された。すなわち、mRS「1」(明らかな障害なし)だった167例でも57.5%はSIS-ADL上で何らかの困難を訴えていた。事実、同じmRS「1」の中にSIS-ADL「65」ポイント例と「72.5」ポイント例が混在していた。
またmRSは、SIS-ADLで評価した「排尿」、「排便」コントロール困難との相関が低いことも明らかになった。さらにSIS-ADLは「抑うつ」状態(PHQ-8評価)との相関も、mRSに比べ良好だった。
「SIS-ADLのほうがより鋭敏な指標である」とCramer氏は結論した。
本試験、ならびに本解析に関するCOIは開示されなかった。