高齢者を65歳以上と定義すると,健康寿命(日常生活に制限のない期間)は男性で6年,女性でも9年しかない。国民の健康寿命を延ばしうる対策のひとつが,65歳以上の肺炎予防のための成人用肺炎球菌ワクチン接種である。大規模臨床試験であるCAPiTA試験において,13価肺炎球菌結合型ワクチン(13-valent pneumococcal conjugate vaccine:PCV13)の接種後,肺炎球菌による市中肺炎の予防効果が認められている1)。
肺炎球菌ワクチン接種が国家的には推奨されていなかったオランダにおいて,プラセボを使用した二重盲検比較CAPiTA試験が,8万4496名を対象として行われた。PCV13血清型関連肺炎球菌性市中肺炎の最初のエピソードが主要評価項目であったが,4年以上の経過観察において,PCV13接種群では49名,プラセボ群では90名がPCV13関連肺炎を発症し,有意な肺炎発症抑制を認めている1)。
肺炎球菌の莢膜多糖体にキャリア蛋白を結合した結合型PCV13は,短期的にはB細胞の活性化による免疫応答により,長期的には樹状細胞・T細胞を介する免疫記憶の確立により,高い免疫応答が期待されている。米国における肺炎球菌ワクチン接種に関する推奨は,2014年に改定されており,65歳以上で肺炎球菌ワクチン接種歴がない場合はPCV13 first,23価多糖体ワクチン(PPV 23)接種歴がある場合は,1年以上間隔をあけてPCV13接種となっている。
【文献】
1) Bonten MJ, et al:N Engl J Med. 2015;372(12): 1114-25.
【解説】
巽 浩一郎 千葉大学呼吸器内科教授