【質問者】
長阪 智 国立国際医療研究センター病院第二呼吸器外科 医長
炎症との鑑別が臨床的に問題となる代表的な肺癌には,広汎な領域を占める肺胞上皮癌や膠様(コロイド)腺癌などがあります。それ以外に,孤立性肺結節を示す病変でも悩ましい陰影に遭遇することは少なからずあります。一般に,肺癌に特徴的なpleural indentation,spiculation,notchingなどのCT所見を認めた場合は,早急に治療計画を立てることになりますが,短期間でCTフォローし,増大,濃度上昇,縮小,濃度低下,消失などの所見からふるいにかけて炎症性結節を除外する場合も多いかと思います。増大,濃度上昇を示す結節については,気管支鏡やCTガイド生検などの,より侵襲的な検査を行うことになります。その中で,数年にわたって緩徐な増大傾向を示し,直近の画像との比較ではほぼ変化を認めない病変が存在します。
充実成分のないすりガラス陰影(pure ground glass opacity:pure GGO)については,周知のことと思われますので触れませんが,本稿では見過ごされやすい泡沫状陰影について述べたいと思います。この陰影は比較的径が大きく,拡張集簇した気管支があたかも泡沫状となっているようにみえ,bubble-like lucencies1)2),bubble-like appearance/areas1)〜4),pseudocavitation5)などと表現され,報告されています。多くは2年以上の経過を伴っており,気管支鏡での検出率が低いということも経過観察期間が長くなる要因と考えられます3)4)。特徴としては,高分解能CTにて複数の気管支が拡張集簇した透亮所見すなわち泡沫状領域に加え,周辺のGGO,胸膜陥入や血管気管支収束像があります3)4)。また,病理所見では,先述のGGOを反映して腫瘍辺縁における腺癌の肺胞上皮置換性増殖,比較的広範な肺胞虚脱,複数の気管支拡張を伴うことが挙げられます3)4)。
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