上眼瞼の正常位置は角膜上方が0.5~2mm隠れる高さであるが,眼瞼下垂は上眼瞼がこれよりも下がった状態である。先天性または後天性に発症する。
先天性では一般的に上眼瞼の可動域が小さい。小児では弱視予防の観点に基づいて診療する。形態覚遮断のほか,屈折,特に乱視の変化にも注意する。後天性の原因は,退行性変化,遺伝性,神経性,外傷等,様々である。偽眼瞼下垂という病態もある。これは上眼瞼の高さは正常で真の眼瞼下垂はないが,他の要因によって眼瞼下垂のように見える状態である。
小児の先天下垂では,弱視予防の観点から治療の介入を行う。立体視の発育が悪い場合には2歳半までに,視力の発達が遅れていれば6歳までに手術を行う。下垂眼の光反射がない場合や乱視度が-2Dを超えた場合は,将来的に立体視不全や弱視の発生が懸念されるため,手術適応となる。患児が眉を上げて見ようとしている場合,つり上げ術の成績がよいため,挙筋機能が5~6mm程度あってもつり上げ術を選択している。
眼瞼下垂の治療は一般的には手術である。しかし,この原則に従わないこともある。後天下垂の重症筋無力症では,まずは抗コリンエステラーゼ薬の内服を試みる。偽眼瞼下垂ではそれぞれの原因病態の治療を行う。
両側下垂で眼球運動障害を合併している場合,両側の下垂手術を行うと複視を生じる可能性があるため,基本的には片側だけ手術を行う。患者が複視を自覚しない場合はこの限りではない。
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