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医師不在時にMRI検査は実施可能か

No.5110 (2022年04月02日発行) P.54

長谷部圭司 (北浜法律事務所・外国法共同事業 医師/ 弁護士)

登録日: 2022-03-30

最終更新日: 2022-03-29

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自由診療のMRI検査において,医師不在の中,医師の指示のもとで検査を実施することは違法でしょうか? 検査には,看護師と放射線技師が対応するという状況です。また違法の場合,どの法令に対して違法となるのでしょうか。
(大阪府 H)


【回答】

【医師不在時のMRI検査の実施について明確な通達はなく,適法であると判断することはできない。しかし,少なくとも一定の条件を満たせば,違法であると言うこともできない】

まず結論から言うと,診療放射線技師(以下,「放射線技師」)が単純磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)検査を,医師不在の中で行うことを「違法である」と断言することはできません。ただし,「合法である」とも断定はできません。以下,その理由について解説します。

放射線技師は,診療放射線技師法(以下,「技師法」)第24条の2第1項および技師法施行令第17条第1号により,MRI検査を「診療の補助」として行うことができると規定されています。つまり,放射線技師は,医師の「診療の補助」としてMRI機器を操作できることになります。逆に言えば,自由診療であろうと,医師の指示なくMRI機器を使って撮影を行うことはできない,ということになります。

それでは,医師の指示がどこまであれば,「診療の補助」として認められるのかについて検討します。MRI撮影についての通達があればよいのですが,現在のところ,この点について直接回答がなされたものはありません。そうすると,他の「診療の補助」についての解釈が,本件の参考になると考えられます。

たとえば,採血や静脈からの点滴の場合,医師が看護師に指示を出していれば,その医師が不在であっても,看護師が指示された医療行為をすることができます。特に,在宅患者への点滴についても,医師からの指示書があれば可能であることを考えると,医師がその場にいなくても診療の補助を行うことができる場合があると言えます。

また,2014年6月25日付厚生労働省健康局長通知の中の「医師の立会いなく,胸部エックス線検査を実施する場合」において,以下の条件を満たせば,検査を行うことができることとなりました。

①検診の実施に関し,事前に胸部エックス線写真撮影を行う診療放射線技師に対して指示をする責任医師及び緊急時や必要時に対応する医師などを明示した計画書を作成し,市町村に提出する。なお,市町村が自ら検診を実施する場合には,当該計画書を自ら作成し,保存する。
②緊急時や必要時に医師に連絡できる体制を整備する。
③胸部エックス線写真撮影時や緊急時のマニュアルを整備する。
④胸部エックス線検査に係る必要な機器及び設備を整備するとともに,機器の日常点検等の管理体制を整備する。
⑤検診に従事する診療放射線技師が必要な教育・研修を受ける機会を確保する。

なお,技師法第26条において,放射線照射についてはより厳格な対応が必要であることが明記されていますが,少なくとも上記の条件を満たした場合,放射線照射よりも制限の少ないMRI撮影については,医師の立ち会いがなくてもできると考えます。

以上から,「医師不在時に,MRI検査は実施可能か」と問われると,明確な通達はなく,適法であると判断することはできませんが,少なくとも一定の条件を満たせば違法であると言うこともできないと考えます。

【回答者】

長谷部圭司 北浜法律事務所・外国法共同事業 医師/ 弁護士

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