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特発性正常圧水頭症でシャント術を進める際の注意点について

No.5110 (2022年04月02日発行) P.49

岩崎真樹 (国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科部長)

山田茂樹 (滋賀医科大学脳神経外科学講座病院講師)

登録日: 2022-04-03

最終更新日: 2022-03-31

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  • 治る認知症として知られる特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus:iNPH)ですが,アルツハイマー病などほかの変性疾患を合併する例があったり,対象が高齢者であったり,シャント術の実施にどの程度のメリットがあるのか判断が難しいことがあります。また,ご家族が過大な期待を持っていることも多く,どのような説明が良いのかなど,診療のコツを教えていただけると幸いです。
    滋賀医科大学・山田茂樹先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    岩崎真樹 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科部長


    【回答】

     【初見では一歩引いて,手術すると決めたら最後まで見届けるつもりで全力を尽くす】

    歩けなくなる,転倒する,物忘れ,頻尿,トイレまで我慢できない切迫性尿失禁など高齢者が要介護に陥るiNPHにおいて,髄液シャント術は患者本人の生活的自立だけでなく,自尊心の回復と介護者の負担軽減が期待されます。ただし,手術で症状が改善する程度は,年齢や基礎疾患,特にアルツハイマー病などの神経変性疾患や脳卒中などの併存の影響を受けます。さらに,入院と全身麻酔が必要な手術は認知機能を悪化させる要因であり,興奮・徘徊・暴力などの活動性せん妄や摂食障害などの非活動性せん妄を引き起こします。加えて,オーバードレナージによる慢性硬膜下血腫やシャント感染などの合併症も,加齢や糖尿病などの基礎疾患で高くなります。

    しかし,紹介元の医療機関では負の情報は説明されていないことが多く,患者と家族は治ると期待して来院されますので,筆者は初見では一歩引いて,たとえ典型的な3徴とくも膜下腔の不均衡な拡大を伴う水頭症(disproportionately enlarged subarachnoid space hydrocephalus:DESH)の画像所見がすべてそろっていてiNPHと確信しても,安易に手術を勧めることはしないようにしています。

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