体温上昇の多くは感染症による発熱であり,敗血症を疑う際は迅速に診療する。一方,入念な病歴聴取・身体所見は診断の鍵であり,正確な検査・治療の判断につながる。
適切な感染防御を行った上で診察を開始する。随伴症状(頭痛,咽頭痛,咳痰/呼吸困難,腹痛/下痢・嘔吐,関節痛,発疹等)や発熱期間,熱型,感染曝露,渡航歴を聴取する。インフルエンザやCOVID-19等の流行性疾患は,地域の流行状況も考慮する。
高齢者や免疫不全患者(ステロイド,化学療法等)は発熱が生じにくく,症状も非特異的(食欲低下,脱力等)となることが多いため,注意を要する。
その他,薬剤熱(抗菌薬,抗てんかん薬等)や腫瘍熱,自己免疫疾患,肺塞栓症・深部静脈血栓症(PE/DVT),さらには高体温の鑑別として熱中症(高温環境)や悪性症候群(抗精神病薬の内服,ドパミン作動薬の中断),セロトニン症候群(SSRI/SNRIの内服),内分泌疾患(甲状腺機能亢進,褐色細胞腫,副腎不全),中枢神経障害〔頭部外傷,くも膜下出血(SAH)等〕などを示唆する経過に注意する。
体表温(腋窩・鼓膜・口腔)より中枢温(血液・食道・膀胱・直腸)のほうが正確であり,重症例では中枢温を用いる。37.5℃以上を微熱,38.0℃以上を発熱とすることが多い。41.5℃より高い場合は異常高熱とされ,敗血症や熱中症(熱射病),悪性症候群等を考慮する。
敗血症はqSOFAやSIRS,EWSなどを単独では用いず,総合的に用いてSOFAスコア2点以上の上昇で診断する。
病歴とともに随伴する身体所見(髄膜刺激徴候,扁桃腫脹,甲状腺腫大,異常呼吸音,心雑音,腹部圧痛・腹膜刺激徴候,皮膚発赤・熱感,CVA叩打痛,前立腺圧痛,カテーテル留置等)で各疾患の検査前確率を検討し,検査・治療につなげる。
循環不全や呼吸不全が合併する場合,輸液(晶質液30mL/kg)や心血管作動薬,酸素投与等で全身管理を開始する。特に敗血症を疑う際には迅速な対応を要する。発熱か高体温か鑑別困難な場合,両者の合併を考慮し,診療を行う。
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