骨盤外傷は高エネルギー外傷によって生じる。寛骨臼骨折と骨盤輪骨折の2種類にわけられ,さらに骨盤輪骨折は後方要素の破綻の有無により,安定型骨折,不安定型骨折にわけられる。不安定型骨盤輪骨折は,出血性ショックを伴うことが多い。
近年,高齢者の低エネルギー外傷による骨盤骨折(脆弱性骨盤骨折)が増加傾向である。
受傷機転を詳細に聞くことにより受傷時の外力の方向を予想することができる。
高齢者の脆弱性骨盤骨折の場合,失神による転倒の可能性もあるために,受傷時の意識消失の有無について問診すべきである。また,受傷以前に転倒していることもあるため,転倒歴についても詳細に問診を行う。
血圧や心拍数などのバイタルサインのみでショックを判断するとショックの認知が遅れるため,乳酸値やbase excessも参考にしながら,早期にショックを認知し,加療することが患者の救命につながる1)。
合併損傷として直腸損傷,生殖器損傷,膀胱損傷を伴うことがある。また,臀部に皮下剝脱創(Morel-Lavallée lesion)を伴うことがあるため,背面観察を忘れずに行う。骨折部での牽引により神経損傷を合併することがあるため,下肢の運動および感覚障害の有無を入念に診察する。
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