副腎腫瘍で手術の適応となるのは,①自立的なホルモン産生能を有するいわゆる機能性腫瘍の場合,②非機能性腫瘍でも腫瘍径が大きいなどの理由で悪性の可能性が疑われる場合,である。機能性副腎腫瘍は,産生するホルモンの種類によってクッシング症候群(CS)/サブクリニカルCS(SC S),原発性アルドステロン症(PA),褐色細胞腫などがあり,これらのうち複数の内分泌活性を有する場合もある。
機能性腫瘍では,腫瘍の摘除によりホルモン過剰分泌を解決することで,付随する高血圧などの種々の合併症や症状などの改善が期待でき,褐色細胞腫やCSではほぼ全例で術後顕著な改善が期待できる。ただ,PAやSCSでは,合併症の改善の程度は症例によりまちまちである。
PAは,アルドステロンの過剰分泌により高血圧,低カリウム血症などをきたすが,腫瘍摘除後に高血圧がどの程度改善するかについては,個人差が大きい。筆者らが日本人コホートで作成した術後高血圧の軽快に関する予測モデルでは,①年齢,②性別,③術前の高血圧罹患期間,④降圧薬を何種類服用しているか,の4項目を因子とし,それらの数値によって術後高血圧の軽快確率を予測することができる。患者の高血圧改善に対する期待ほどには術後高血圧が改善しない症例もみられるため,このようなツールを用いた術前の情報提示は,医師・患者双方にとって有用と考える。
Utsumi T, et al:World J Surg. 2014;38(10): 2640-4.