内ヘルニアとは,体腔内において陥凹部,囊状部,裂孔などに腹腔内臓器が陥入した状態のことを言う。腹膜窩を通じて後腹膜へ陥⼊する腹膜窩ヘルニアと,腸間膜や⼤網・小網などにできた異常裂孔に陥⼊する異常裂孔ヘルニアとに⼤きく分類される。解剖学的発生部位は頻度順に,傍十二指腸53%,盲腸周囲13%,Winslow孔8%,腸間膜8%,S状結腸間膜窩6%,膀胱上窩/子宮広間膜異常裂孔6%,後吻合部5%,大網・小網異常裂孔4%1)2)である(図)1)。後吻合部のように手術によりつくられた裂孔に陥入することもある。腸閉塞症状を契機に指摘される比較的稀な疾患であり,機械的腸閉塞症例の0.5~5.8%である1)。内ヘルニアと診断がつき次第,手術適応である。緊急で行うか,待機的に行うかについては重症度で判断する。
悪心・嘔吐,腹痛,腹部膨満,便秘などの腸閉塞症状が典型的である。腸管の絞扼により血流障害を生じると発熱や持続する強い腹痛を伴い,反跳痛や筋性防御などの腹膜刺激症状が認められるようになる。バクテリアルトランスロケーションや腸管の壊死・穿孔が原因の腹膜炎から敗血症に進展し,ショック状態に陥ることもある。
血液・生化学検査において,白血球やCRPの上昇が認められる。腸管壊死に陥ればLDH,CK,乳酸値の上昇を,また,血液ガス分析においてアシドーシスが認められる。敗血症に進展すると,肝腎機能障害や播種性血管内凝固症候群(DIC)の所見として,白血球減少,血小板減少,FDP/Dダイマーの上昇,プロトロンビン時間の延長などの所見が認められる。
腹部単純X線写真において,鏡面形成を伴う腸管拡張像が認められる。腹部超音波検査では,腸管拡張像や腹水貯留所見が認められる。造影CTは診断に最も有用な検査である。陥入腸管の集簇像・囊状拡張像を目印に,内ヘルニアの解剖学的発生部位を診断できることがある。腸管壁の菲薄化,造影効果の減弱,腸管気腫像,血性腹水の貯留など,腸管虚血を疑わせる所見が認められた際には,緊急的に手術を行わなければならない。
壊死・穿孔から腹膜炎,敗血症,ショック状態,DICへと急速に重篤な状態となりうるため,手術適応を見誤らないためにも早期に外科の介入を要請する。
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