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痙攣[私の治療]

No.5117 (2022年05月21日発行) P.44

櫻井 淳 (日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野診療教授)

登録日: 2022-05-24

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  • 痙攣とは,全身または一部の骨格筋に生じる発作的な不随意運動である。このうち脳内の電気活動の乱れ(過剰興奮・過同期)が生じて起こるものを「てんかん」と呼ぶ。治療の基本は,①現在起きている痙攣を止めること,②原因を究明し痙攣の再発を防ぐこと,③痙攣や抗痙攣薬投与による気道,呼吸等の障害に対応すること,である。てんかんで持続時間が5分以上続く場合を「早期てんかん重積状態」,治療により痙攣が止まらず30分以上続く場合を「確定したてんかん重積状態」,さらに抗てんかん薬の点滴・静注などでも頓挫せず60~120分以上持続する場合を「難治てんかん重積状態」と言う。

    ▶病歴聴取のポイント

    身体のどこから痙攣が始まったか,痙攣に左右差はあったか,痙攣は間代性か強直性か等の痙攣が起こった際の状況を聞き出す。救急隊より,痙攣により意識消失した際に頭部打撲などの外傷がなかったか等の現場の状況を聴取する。また,可能であれば,てんかんの既往,痙攣をきたすような薬物使用歴・既往歴を聞き出す。てんかんの既往のない初発の痙攣は脳炎も念頭に入れて,先行する感染症状がなかったか等の聴取も必要となる。

    ▶診察のポイント

    痙攣中はバイタルサインの測定や身体診察が困難な場合が多い。抗痙攣薬に由来する意識障害の作用が十分消失したと考えられる時点で,意識レベルや麻痺などの神経学的評価を行う。

    ▶緊急時の処置

    痙攣時は迅速な対応が必要となる。まずは高濃度酸素を投与,末梢静脈確保,モニタリングを行う。痙攣症例では最初に必ず血糖測定を行い,低血糖(60mg/dL以下)がみられた場合はビタミンB1(チアミン塩化物塩酸塩100mg)とブドウ糖(50%ブドウ糖液50mL)を静注する。抗痙攣薬により痙攣が止まった後に気道の不安定化や呼吸抑制が起こる可能性がある。気道確保を行い,酸素投与を継続し,必要があれば躊躇せずに気管挿管,人工呼吸を行う。

    一手目 :〈早期てんかん重積状態〉セルシン®注(ジアゼパム)成人:1回5~10mg(5mg/分で静注),小児:1回0.3~0.5mg/kg(静注)

    二手目 :〈一手目が無効の場合,一手目に追加(確定したてんかん重積状態)〉気道確保,酸素投与,循環モニタリング下で,ホストイン®注(ホスフェニトインナトリウム水和物)1回22.5mg/kg(150mg/分以下で静注)

    三手目 :〈二手目が無効の場合,二手目に追加(難治てんかん重積状態)〉気管挿管,人工呼吸下で,ドルミカム®注(ミダゾラム)成人:1回0.05~0.40mg/kg/時(持続静注),小児:1回0.1~0.5mg/kg/時(持続静注)

    四手目 :〈三手目が無効の場合,三手目に追加〉引き続き気管挿管,人工呼吸下で,ラボナール®注(チオペンタールナトリウム)1回3~5mg/kg(静注),有効であれば1回2~5mg/kg/時(持続静注)

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