心不全とは,何らかの心臓機能障害,すなわち心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難や倦怠感が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する症候群である。
労作時息切れや下腿浮腫など心不全が疑われる場合は,心臓の聴診によるⅢ音や頸静脈怒張などの身体所見,胸部X線による肺うっ血,胸水の評価が重要である。
B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP),N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)の測定は心不全の診断に有用である。
心エコーにて左室駆出率(LVEF)の低下が認められない場合は,LVEFの保たれた心不全(HFpEF)を疑う。
薬物治療が中心であるが,減塩,禁煙,服薬を遵守し過労を避けるなどの患者指導や運動療法も重要である。薬物治療は,心不全のステージ分類〔米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)〕とLVEFに基づき選択する。
ステージAはリスク因子を持つが器質的心疾患がなく,心不全症候はない。リスク因子の治療を行う。
ステージBは器質的心疾患を有するが,心不全症候はない。左室機能障害がある場合は,心不全発症予防のためアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)およびβ遮断薬を投与する。
ステージCは器質的心疾患を有し,心不全症候を有する。治療薬はLVEFの低下した心不全(HFrEF),LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF),HFpEFに応じて選択する。
ステージDは適切な治療に抵抗性の難治性心不全ステージである。
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