免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)の登場により遠隔転移を有する進行非小細胞肺癌の治療も,治癒を最終目標とする時代を迎えている。2020年11月にはICI同士を併用する抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体±化学療法も承認された。
進行非小細胞肺癌の治療法は臨床病期,組織型(非扁平上皮癌・扁平上皮癌),ドライバー遺伝子の有無,PD-L1免疫染色による腫瘍細胞の陽性率(tumor proportion score:TPS) によって基本的な治療方針が決定される。さらに全身状態,主要臓器機能,社会的背景が勘案される。
まず患者の既往歴(自己免疫疾患の有無)を含む完全な病歴を聴取する。画像診断で肺癌を疑えば気管支鏡下生検やCTガイド下生検などを行い,迅速診断で肺癌が確定されれば5標的遺伝子(EGFR,ALK,ROS1,BRAF,MET)を一括診断できるAmoyDx®肺癌マルチ遺伝子PCRパネル(Multiplex PCR法)を実施する。現在,さらに希少なドライバー遺伝子を検出するためには次世代シークエンサーが必要であり,そのためには十分な腫瘍量と腫瘍の占める割合が20~30%を超える良質な検体提出が必要となる。ICIを一次治療に組み込んだ研究では,チロシンリン酸化酵素阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)の高い効果とICI使用後のTKIによる有害事象増加の観点からEGFR遺伝子変異,ALK融合遺伝子を有する症例は対象から除かれている。同様に対応する有望なTKIを有するROS1融合遺伝子,BRAF V600E変異,MET遺伝子Exon 14 skipping変異,NTRK融合遺伝子,RET融合遺伝子などのドライバー遺伝子を有する患者を,ICIを含む一次治療の対象から除くことは現時点では妥当と考えられる。
同時に単純・造影胸部CT検査(副腎を含む),単純・造影頭部MRI検査,PET CT検査による“病期診断”が行われる,単発の脳転移など(Oligometastasis)は定位放射線治療などが先行して行われることもある。現在,ドライバー遺伝子を持たない進行非小細胞肺癌の一次治療には,ICIが禁忌でない限り組み込まれている。
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