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意識障害[私の治療]

No.5120 (2022年06月11日発行) P.40

中森知毅 (横浜労災病院救命救急センター救急災害医療部部長)

登録日: 2022-06-14

最終更新日: 2022-06-07

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  • 呼吸や循環機能の維持を念頭に置きながら,同時に,脳への直接的な障害か,間接的な障害かを考え,速やかに検査と処置を行う。

    ▶病歴聴取のポイント

    意識障害は生命の危険に直結する。Japan Coma Scale(JCS)で30以下,Glasgow Coma Scale(GCS)で8点以下,あるいは急速に2点以上低下する場合は,気道・呼吸・循環の3つに障害がないかを検討し,これらのサポートを最優先に考える。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    初期評価として以下のA・B・C・Dの項目を評価し,必要があれば即座に対応していく。

    A〔airway(気道)〕:気道の開通だけでなく,上気道閉塞を示す呼吸様式に注意する。分泌物の吸引,舌根沈下にはエアウェイ挿入,改善がない場合や昏睡状態では気管挿管を考慮する。

    B〔breathing(呼吸)〕:呼吸数,呼吸音,呼吸様式,SpO2に注意し,酸素投与,陽圧換気,気管挿管等を考慮する。

    C〔circulation(循環)〕:血圧,脈拍数,四肢冷感や冷汗の有無に注意し,補液や昇圧薬の使用を考慮する。

    D〔dysfunction(中枢機能障害)〕:意識状態,麻痺,瞳孔所見を確認する。昏睡状態(JCS 30以下,GCS 8点以下)では,気道確保を行う。

    【初期評価とともに行う意識障害の鑑別】

    上述のA・B・C・Dを確認,緊急対応を行い,鑑別に進む。意識障害の原因は多岐にわたるが,最初に想起すべき病態を以下に挙げる。身体所見,胸部単純X線,血液ガス分析,血糖測定,超音波検査を行いながら,鑑別することになる。

    A〔airway(気道)〕:気道閉塞を考慮する。原因として気道異物,喉頭蓋炎などがある。

    B〔breathing(呼吸)〕:呼吸不全を考慮する。原因として,肺血栓塞栓症,肺炎,喘息重積,一酸化炭素中毒などがある。

    C〔circulation(循環)〕:ショックを考慮する。

    D〔dysfunction(中枢機能障害)〕:脳ヘルニアを考慮する。原因として,脳血管障害,脳腫瘍,脳挫傷,脳炎などがある。

    E〔epilepsy(てんかん発作)〕:痙攣重積を考慮する。原因として,てんかん,代謝性疾患,子癇,薬物中毒などがある。

    F〔fever & freeze(体温異常)〕:原因として,熱中症,悪性症候群,偶発性低体温症などがある。

    G〔glycemia(血糖値異常)〕:高浸透圧高血糖症候群(HHS)や低血糖発作がある。

    H〔hydrogen(アシドーシス)〕:原因として,糖尿病性ケトアシドーシス(DKA),アスピリン中毒,CO2ナルコーシスなどがある。

    I〔ionic(電解質異常)〕:原因として,Na,Ca,Mgの異常などがある。

    これらの中で,血糖値測定は忘れがちになるが,低血糖症の場合,即座に補わなければ普遍的な脳障害を負う可能性があるため,速やかな測定と加療が必要である。

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