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工業・家庭用品等による中毒/自殺未遂[私の治療]

No.5122 (2022年06月25日発行) P.43

中谷宣章 (埼玉医科大学病院総合診療内科(救急)講師)

登録日: 2022-06-28

最終更新日: 2022-06-23

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  • 現在,病院での診療,特に救急外来でみる場合は急性中毒が多い。過去には水俣病やイタイイタイ病など慢性中毒(公害)もあったが,現在では規制も厳しくなっており,工業用品による慢性中毒は減少している。しかし,2012年に塩素系有機洗浄剤を大量に使用してきた印刷工場の従業員の多くが胆管癌を発症したと報告された事例もあったように,完全にはなくなっていない。慢性中毒は特殊健康診断で発見されることも多い。
    日本中毒情報センターの統計では,起因物質別の相談は,一般市民では家庭用品が54%,医薬品が36%,工業用品は2%であった。医療機関からの相談は,医薬品が41%,家庭用品が39%,工業用品は8%であった。
    5歳未満では不慮の事故による誤飲・誤食がほぼ全例であった。65歳以上では,不慮の事故による誤飲・誤食は90%であり,自殺企図は6%であった。20~64歳においては,不慮の事故による誤飲・誤食が76%であったが,労災が5%を占め,自殺企図が15%であった。
    工業用品の品物別では,炭化水素類(灯油,ガソリンなど)が最多であり,ついで化学薬品(ホウ酸,酸やアルカリなど),塗料(水性,油性,ラッカーなど),ガス(一酸化炭素,硫化水素など)の順であった。家庭用品では,洗浄剤(漂白剤,住居用洗剤など)が最多であり,それから化粧品,たばこ,文具(クレヨン,接着剤,インクなど),殺虫剤(ピレスロイド,ホウ酸など),乾燥剤(シリカゲル,塩化カルシウムなど)の順であった。

    ▶病歴聴取のポイント

    病歴聴取は重要である。誤飲・誤食以外にも,吸入や皮膚,眼などから体内へ入る可能性もある。原因物質の種類だけでなく,量,時間(摂取時間や曝露時間),濃度も大切な情報であり,摂取や曝露後の処置,その後に出現した症状も確認する。ただし,自殺企図や認知症,違法薬物の場合などでは正しい情報を聴取できないこともある。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    バイタルサインを把握する。呼吸数,脈拍数,血圧,酸素飽和度,意識レベル,体温,瞳孔をチェックする。重症の場合は,原因物質にかかわらず安定化を図る。

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