『大腸癌治療ガイドライン』では,側方郭清の適応基準は「腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にあり,かつ固有筋層を超えて浸潤する症例」である。現在では,欧米での標準療法である術前化学放射線療法(CRT)を行い,予防的な側方郭清は省略するという治療方針も,腹腔鏡手術の普及とともに行われることもあるが,あくまでわが国における標準治療は,TME(全直腸間膜切除術)+側方郭清である。
側方郭清を施行して側方転移陽性であった症例の5年生存率は40%程度であるとされ,転移陽性例に対する治療効果に関しては十分であると考えられる。
しかし,予防的な側方郭清については非常に議論のあるところで,側方郭清は自律神経を温存しても,排尿機能や男性性機能障害の原因となりうる。
これを明らかにするためにJCOG0212試験が行われた。画像上側方リンパ節転移が明らかでないstage 2または3の下部直腸癌症例に対し,TME単独のTME+側方郭清に対する非劣性を検証した多施設共同無作為化比較試験である。中間解析結果として,郭清群で7%の側方リンパ節転移が明らかになった1)。無再発生存解析を含む詳細な結果は今後論文として公表されるであろうが,これによって側方郭清の臨床的意義が明らかになり,わが国の下部直腸癌の標準治療に大きな影響を与えることになるであろう。
【文献】
1) Fujita S, et al:Lancet Oncol. 2012;13(6):616-21.
【解説】
1)清松知充,2)渡邉聡明 東京大学腫瘍外科 1)病院講師 2)教授