株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

胎児水腫[私の治療]

No.5126 (2022年07月23日発行) P.51

竹森 聖 (杏林大学医学部産科婦人科学教室)

登録日: 2022-07-20

最終更新日: 2022-07-19

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 胎児水腫は体腔(心囊,胸腔,腹腔など)および皮下のうち少なくとも2箇所以上に液体貯留を認める状態である。単一でなく様々な要因で起こるが,大きく免疫性と非免疫性にわけられる。

    ▶診断のポイント

    超音波検査により胎児水腫の診断は容易である。皮下浮腫は5mm以上を基準とし,腹水,胸水,心囊液の貯留も確認する。胎盤の腫大を胎児水腫の一所見とすることもある1)。胎児水腫を認めた場合は,胎児全身の超音波検査や追加検査を行い,原因を鑑別することが重要である。

    【免疫性】

    Rh D抗体またはその他不規則抗体による血液型不適合により,胎児貧血から胎児水腫となる。主に2回目以降の妊娠の胎児に発症する。1968年以降,抗Dグロブリン抗体が用いられるようになってから,Rh D抗体が原因となる胎児水腫の発生数は劇的に減少した。診断は母体Rh血液型および不規則抗体の確認と,後述の胎児貧血の評価である。

    【非免疫性】

    免疫性胎児水腫が減少したことで相対的に割合が増え,現在胎児水腫全体の76~87%1)を占める。原因は多岐にわたり,頻度順に以下に示す。

    〈心血管系の異常〉

    心構造異常,胎児不整脈,心筋症などが原因となる。胎児水腫の機序は右心不全による静脈圧の上昇等である。診断には専門医による胎児心臓超音波検査が肝要である。

    〈胎児貧血〉

    異常ヘモグロビン症や母児間輸血症候群などが原因となる。また,免疫性胎児水腫や後述の感染症も機序は貧血によるものである。高拍出性心不全が主因であるが,髄外造血による肝機能低下も関与すると言われる。

    胎児超音波検査での,中大脳動脈最高血流速度(MCA-PSV)は胎児貧血の評価に頻用されており,妊娠週数に応じた平均値の1.5MoM以上であれば,中等度以上の胎児貧血を疑う2)

    〈染色体異常〉

    ダウン症候群やターナー症候群などでみられる。心構造異常やリンパ管異形成が原因である。

    〈感染症〉

    パルボウイルスB-19は胎児貧血の原因のひとつとなる。また,トキソプラズマ,風疹,サイトメガロウイルス,ヘルペスウイルスなどのいわゆるTORCH症候群も原因となりうる。

    〈胸部疾患・リンパ管異形成〉

    先天性肺気道奇形(congenital pulmonary airway malformation:CPAM)や横隔膜ヘルニアなどは,心臓を圧迫することで静脈還流が減少し胎児水腫となる。リンパ管異形成による乳び胸も,増悪すると同様の機序で全身性の浮腫を認め胎児水腫となる。

    〈双胎間輸血症候群(twin-twin transfusion syndrome:TTTS)〉

    一絨毛膜二羊膜双胎に起こりうる病態である。二児が共有する胎盤には二児間の吻合血管があるが,血流の不均衡が起こると血流が過多となった児(受血児)は右心負荷となり羊水過多,血流異常等が起こり,やがて胎児水腫となる。

    〈その他〉

    骨形成不全症などの奇形症候群,尿路奇形,先天性代謝異常,胸腔外腫瘍,消化管疾患なども原因となりうる。また,約18%は原因が特定できない特発性である1)

    残り817文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top