腹膜炎は,病態により一~三次性に分類される1)。
一次性腹膜炎:しばしば特発性細菌性腹膜炎とも呼ばれ,明らかな原因がなく,腹腔内に感染が成立する病態を言う。成人では腹水が存在する肝硬変患者でよくみられ,単数菌感染が多い。
二次性腹膜炎:消化管や生殖器に存在する微生物が消化管壁の穿孔または穿通などを契機に腹腔内に漏れ出ることによって発症する。急性虫垂炎や消化管穿孔などの市中発症と,術後縫合不全などの院内発症に大別される。複数菌感染が多い。
三次性腹膜炎:二次性腹膜炎治療後に発症した腹膜炎であり,腹腔内の検体からはEnterococcus属やCandida属といった病原性の低い微生物が検出される。
臨床経過別には急性腹膜炎と慢性腹膜炎にわけられる。本稿では,これらの腹膜炎のうち,臨床的に頻繁に遭遇することの多い急性腹膜炎である二次性腹膜炎について概説する。
腹膜炎の原因疾患は多岐にわたり,症状はそれぞれの疾患によって異なるが,多くの場合,腹痛や発熱を認める。腹膜炎が限局している場合は局所の自発痛・圧痛を認めるが,炎症範囲が腹膜全体に広がると,非常に重篤な汎発性腹膜炎となり,反跳痛や筋性防御などの理学的所見が陽性となる。また,炎症波及に伴い,麻痺性イレウスや腹膜刺激症状により悪心・嘔吐がみられることもある。
血液検査にて,左方移動を伴う白血球増加やCRP値上昇を呈する。また,画像診断検査として,特に造影CT検査は有用である。単純CT検査では,臓器虚血の有無,血管性病変,急性膵炎の重症度判定など詳細な評価が困難であり,可能な限り造影CT検査を行うべきである。造影CT検査では,原因となる臓器病変の的確な評価を行う。また,膿瘍形成や腹腔内遊離ガス像による消化管穿孔の診断も可能であり,外科的処置やドレナージの必要性などについても迅速に判断する。一方,放射線曝露を避けることが望ましい妊婦や小児では,画像診断検査として超音波検査が施行される。
細菌性腹膜炎の診断には培養検査が重要であるが,培養結果が出るまで時間がかかるため,急性腹膜炎ではその結果を待たずに治療を開始する。
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