小児の有熱性尿路感染症(febrile urinary tract infection:fUTI)の30~50%は膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux:VUR)が原因である。VURによりfUTIを繰り返すと腎瘢痕が多発し,腎機能障害(逆流性腎症)が生じるので,fUTIを予防することがVUR治療の主目的となる。原発性VURと続発性VURがあり,原発性VURは尿管膀胱移行部の解剖学的異常が原因であり,続発性VURは後部尿道弁など尿道の閉塞性疾患や神経因性膀胱等により膀胱が高圧になるため生じる。本稿では原発性VURについて述べる。
fUTIを発症した児に超音波検査を行い,腎の形態異常(腎サイズの左右差など),水腎症,水尿管症,膀胱壁の肥厚などがないか確認する。VURが疑われる場合は排尿時膀胱尿道造影により,VURの有無および男児では尿道の閉塞性疾患の有無を診断する。また,慢性期(fUTIから3カ月後以降)の腎シンチグラフィーにより腎瘢痕の有無,分腎機能を確認する。
VURはⅠ~Ⅴ度に分類され,一般的に自然消失が見込めるⅠ~Ⅱ度のVURは保存的治療を,Ⅴ度のVURは手術治療を選択する。Ⅲ~Ⅳ度のVURはfUTIの頻度,腎瘢痕の有無・新生,年齢,片側/両側などから保存的治療または手術治療を選択する。抗菌薬予防内服(continuous antibiotic prophylaxis:CAP)中に,fUTI(いわゆるbreakthrough infection)が生じた症例は手術治療を行う。DefluxⓇ(膀胱尿管逆流症治療用注入材)による内視鏡的注入療法は非侵襲的であるが,Ⅱ~Ⅳ度のVURのみが対象である。ただし,後述する機能性排尿排便障害(bladder and bowel dysfunction:BBD)を合併する児に対しては成功率が低く,禁忌である。VUR根治術は開放手術と腹腔鏡下膀胱内手術があり,手術成績は同等とされる。
絞扼輪が狭い包茎の男児はステロイド軟膏塗布による包皮翻転治療を行い,UTIを予防する。
BBDは尿意切迫・昼間尿失禁などの下部尿路症状と便秘・遺糞などの排便に関する問題を有する状態で,BBDを有するVUR症例はVURの自然治癒率が低く,また,腎瘢痕が生じるリスクが高いので,BBDに対する治療を行う。
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