日本では従来「イレウス」という用語が誤用されてきた。「腸閉塞」と「イレウス」を使い分ける必要がある1)。機械的あるいは機能的に腸管の蠕動が生じえない状態において,機械的閉塞を「腸閉塞」,汎発性腹膜炎など非閉塞性で機能的な閉塞を「イレウス」と呼ぶ1)。また,腸閉塞のうち,支配血管も巻き込まれ腸管の血流不全を伴うものを絞扼性腸閉塞と言う。腹腔内の裂孔や囊状部などに腸管などの腹腔内臓器が陥入した状態は内ヘルニアと呼ぶ。
腹痛,腹満,最終排便(下血の有無),嘔気・嘔吐(性状)などの症状の有無と,蠕動音,圧痛,反跳痛(tapping pain)などの所見とともに,腸閉塞のほとんどが術後の癒着に伴うものであり,腹部手術歴や腸閉塞の既往,食事内容を聴取することも大切である。
超音波検査や腹部単純X線検査で腸閉塞やイレウスは診断しうるが,大切なのは閉塞部位があるか否か,つまり,腸閉塞かイレウスかの鑑別と,前者の場合には,絞扼性か否かの鑑別を必ず行うことである。そのためには腹部CTが必要なことが多く,閉塞の有無や閉塞部位を同定する。腸閉塞の場合には造影CTも行い,絞扼性か否かを鑑別することが必要で,必ず単純CTも撮影し,造影CTと比較し,造影不良域の有無を確認することが肝要である1)。
乳幼児では腸重積,中年以降の成人では腸捻転や腫瘍等による腸重積も鑑別に挙げる。腸重積は,乳幼児では腹部所見や超音波検査で診断がつくことも多い。
腸閉塞では鎮痛とともに,絶飲絶食,細胞外液による十分な輸液が必要である。絞扼性腸閉塞では経鼻胃管を挿入し,手術によって絞扼を解除する。非絞扼性の腸閉塞やイレウスの場合には,経鼻胃管やイレウス管を挿入し,輸液や鎮痛薬を用いて保存的に治療を行う。
非絞扼性の腸閉塞では,水溶性消化管造影剤のガストログラフインⓇ(アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン)を用いると閉塞部位が明らかになるとともに,蠕動を促進し,閉塞が解除されることがある2)。腸捻転の場合には,大腸内視鏡によって捻転を解除することも可能である。腸重積では,バリウム以外の造影剤を用いた注腸による整復が試みられてきたが,最近は超音波プローブによる整復例も報告されている。
イレウスの場合には,その原因を解除することが最も大切である。
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