1 長引く咳と慢性咳嗽
(1)患者が訴える「長引く咳」と医師が考える「慢性咳嗽」の違い
・認識のずれにより患者-医師関係が崩れないよう,共感を示しつつ診察する。
(2)日本と欧米で異なる慢性咳嗽への考え方
・日本の慢性咳嗽3大疾患,アトピー咳嗽は日本発。欧米には概念が広がっていない。
・米国に多い胃食道逆流症による咳嗽は日本に少ない。
(3)慢性咳嗽の病態を考える2つのキーワード
①咳受容体感受性亢進か気道過敏性亢進か,②好酸球性か好中球性か。
2 慢性咳嗽でターゲットとなる疾患
(1)主な原因(5つの鑑別診断)
①咳喘息,②アトピー咳嗽,③副鼻腔気管支症候群(SBS),④感染後咳嗽,⑤胃食道逆流症
(2)見逃したくない原因(5つの鑑別診断)
①百日咳,②中枢気道病変,③慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎),④間質性肺炎,⑤アンジオテンシン変換酵素阻害薬
3 慢性咳嗽の病歴聴取
(1)咳の性状(乾性か湿性か)
・「乾性か湿性か」がすべての鑑別の始まり。
(2)咳の強度
・visual analogue scale(VAS)かnumerical rating scale(NRS)で評価する。
(3)日内変動・増悪因子
・アレルギー疾患は,深夜から明け方に増悪する。
(4)社会・環境要因
・患者固有の環境因子を探る。
(5)随伴する症状
・慢性疾患では,低酸素血症があっても呼吸困難を欠くことがある。
4 慢性咳嗽で注意したい身体診察
(1)バイタルサイン
・労作時の呼吸状態まで確認する。
(2)目
・眼球結膜の充血に注意する。
(3)耳
・耳鏡で5つの解剖を確認する。
(4)副鼻腔
・副鼻腔炎では,圧痛あるいは叩打痛を確認する。
(5)口腔~咽喉頭
・咽頭後壁のリンパ濾胞を確認する。
(6)頸部
・後頸部リンパ節は,探るように確認する。
(7)胸部
・呼吸音は,強制呼気で評価する。
5 慢性咳嗽の新たな視点
(1)フレイルと咳嗽反射の低下
・誤嚥性肺炎は,嚥下機能および咳嗽反射の低下による。
(2)難治性咳嗽の新しい考え方
・治療抵抗な咳嗽に新しい概念が提唱されている。