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■NEWS 【米国心臓協会(AHA)】フィブラートは対象を「高TG・低HDL-C」2型糖尿病に限定してもCV転帰を改善できず:RCT“PROMINENT”

登録日: 2022-11-09

最終更新日: 2022-11-09

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2型糖尿病(DM)ではスタチン治療下でも、高トリグリセライド(TG)血症を呈する例が多い。そのためフィブラート追加によるTG低下を介したさらなる心血管系(CV)イベント抑制に期待がかかったが、大規模ランダム化比較試験(RCT)、FIELDACCORDはいずれも、フィブラート追加による有意なCVイベント抑制を証明できなかった。しかしその後、高TG血症だけでなく低HDL-C血症も合併している患者に限れば、フィブラートは高TG血症例の冠動脈イベントを抑制するとのメタ解析が報告された[Sacks FM, et al. 2010]。

このような知見を背景として、高TG、低HDL-Cを呈する2DM例を対象に、フィブラートのCVイベント抑制作用を検討するRCTPROMINENT”が実施されたが、ネガティブな結果に終わった。115日からシカゴ(米国)で開催された米国心臓協会(AHA)学術集会におけるAruna D. Pradhan氏(ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、米国)の報告から紹介する。

PROMINENT試験の対象は、十分なスタチン治療下で「TG 200499mgdL」かつ「HDL-C40mgdL」だったCV高リスク(CV既往/高齢1次予防)2DM 1497例である(日本からも305例を登録)。

年齢中央値は64歳、28%が女性だった。DM罹患歴は46%が「10年以上」、HbA1c中央値は7.3%である。TG中央値はおよそ270mgdLHDL-C33mgdLだった。

背景治療を見ると、96%がスタチンを服用しており、LDL-C中央値は80mgdL弱だった。

これら1497例はフィブラート(ペマフィブラート0.2mg×2/日)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。

その結果、TG1年後、プラセボ群の「244mgdL」に対しフィブラート群では「189mgdL」まで低下し、この差は試験終了時までおおむね維持された。またHDL-Cも開始4カ月後にはプラセボ群に比べ2mgdLの高値となっていた。

一方、フィブラート群では試験開始4カ月後、LDL-Cがプラセボ群に比べ11mgdLの高値だった(試験開始時からの上昇率はプラセボ群よりも有意に大)。

そして3.4年(中央値)観察後、1次評価項目である「CV死亡・心筋梗塞・緊急血行再建を要する不安定狭心症・脳卒中」のフィブラート群における対プラセボ群ハザード比(HR)は1.0395%信頼区間[CI]:0.911.15)となり、有意差はなかった。両群の発生率曲線は、試験開始から終了まで一貫して、ほぼ重なっていた。

また1次評価項目を構成するイベントを個々に比較しても、有意差はなかった。

さらに事前設定された20近いサブグループ解析(スタチン強度別、開始時TGの高低など)でも、両群間に有意差はなかった。

「総死亡」リスクにも、有意差はなかった(HR1.0495%CI0.911.20)。

一方、有害事象は、重篤なものに限れば両群間に有意差はなかったが、フィブラート群では「腎イベント」が有意に多かった(10.7 vs. 9.6100例・年、HR1.1295%CI1.041.20)。また静脈血栓塞栓症も低頻度ながら、フィブラート群におけるHR2.0595%CI1.353.17)だった(0.43 vs. 0.21100例・年)。なお深部静脈血栓症の微増はFIELD試験でも報告されている。

この結果についてPradhan氏は、フィブラート群におけるLDL-C上昇がTG低下などによる有用性を打ち消した可能性を指摘した。

一方、指定討論者のKarol E. Watson氏(UCLA、米国)は、スタチンが広く使われるようになった現在では、少なくとも現存するフィブラートにはCV転帰改善を期待できないと結論。

というのも、フィブラート製剤がCV転帰を改善したRCT1999年報告の“VA-HIT”(対象は低HDL-Cを呈する冠動脈疾患男性)が最後であり(同試験が実施された1990年代はまだ、著明な高コレステロール血症を除き、CV高リスクでもスタチンは頻用されなかった)、それ以降は前出のFIELD試験ACCORD試験を含めすべてネガティブ試験だったためである。

本試験はKowa Research Instituteから資金提供を受けて実施された。また発表と同時に論文がウェブサイトで公開されている。

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