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■NEWS 【米国心臓協会(AHA)】SGLT2阻害薬による転帰改善作用を「絶対リスク差」で評価すると?:SMART-Cメタ解析

登録日: 2022-11-11

最終更新日: 2022-11-11

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SGLT2阻害薬は今や血糖降下薬の枠を超え、さまざまな疾患に対する転帰改善作用が注目されている。115日からシカゴ(米国)で開催された米国心臓協会(AHA)学術集会では、それら有用性を検討したランダム化比較試験(RCT)をメタ解析した“SMART-C”研究が報告された。直前4日に論文が出されたEMPA-KIDNEY試験も含まれている。David Preiss氏(オックスフォード大学、英国)の報告を紹介するとともに、治療効率も検討したい。

メタ解析の対象となったのは、SGLT2阻害薬の有用性をプラセボと比較し、かつ各群500名以上を6カ月以上観察した二重盲検試験である。

対象疾患別に「心血管系(CV)高リスク2型糖尿病(DM)」(4試験、42568例)と「心不全(HF)(±DM)」(5試験、21947例)、「慢性腎臓病(CKD)(±DM)」(4試験、25898例)の3グループに分けられた。

まず「CV死亡・HF入院」は、上記3グループすべてで、SGLT2阻害薬群における有意なリスク低下が観察された。「CV死亡」のみで検討しても同様だった。

ただし「DM非合併」例のみで検討すると、「HF例」ではSGLT2阻害薬で「CV死亡・HF入院」リスクは有意に減少していた一方、「CKD例」ではサンプル数が十分でないこともあり、減少傾向にとどまった。

本メタ解析の特徴は、「絶対リスク減少幅」も算出している点である。

SGLT2阻害薬による上記「CV死亡・HF入院」抑制作用を相対リスクで評価すると、「CV高リスク2DM例」ではプラセボ群に比べ20%の有意低値だった。一方、これを絶対リスクで評価すると減少幅は「51000例・年」であり、1年間の治療必要者数(NNT)を算出すると「200例」となる。

同様に「腎疾患進展」の絶対リスク減少幅は21000例・年(1年間NNT500例)、「急性腎障害」も11000例・年(同1000例)だった。

一方「HF例」における「CV死亡・HF入院」絶対リスク減少幅は、「DM合併」ならば341000例・年(1年間NNT30例)、「DM非合併」でも221000例・年(同46例)だった。

また「腎疾患進展」の減少幅は「DM合併」で61000例・年(同167例)、「DM非合併」は21000例・年(同500例)、「急性腎障害」もそれぞれ5(同200例)と61000例・年(同167例)だった。

CKD例」では「腎疾患進展」に対する抑制が著明で、「DM合併」における減少幅は111000例・年(1年間NNT91例)、「DM非合併」で151000例・年(同67例)だった。「急性腎障害」減少幅も、それぞれ4(同250例)と51000例・年(同200例)、「CV死亡・HF入院」は11(同91例)と21000例・年(同500例)だった。ただしDM非合併CKD例は、先述の通りサンプル数が少ない点に留意する必要があるという。

なお指定討論者のNaveed Sattar氏(グラスゴー大学、英国)は、SGLT2阻害薬によるこのような有用性の機序として「血行動態ストレス(hemodynamic stress)減少」と、「細胞過栄養(cellular overnutrition)改善」の可能性を指摘していた。

本メタ解析はUK Medical Research CouncilKidney Research UKの資金提供を受けた。製薬会社からの資金提供はない。

また発表と同時に、Lancet誌ウェブサイトで論文が公開されている。

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