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HELLP症候群[私の治療]

No.5144 (2022年11月26日発行) P.47

牧野真太郎 (順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科教授)

登録日: 2022-11-29

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  • HELLP症候群の原因は,血管透過性亢進による循環血漿量減少と血管内皮障害による血小板とアンチトロンビンの過消費である。HELLP症候群は重症妊娠高血圧症候群の10~20%に発症し,上腹部痛,嘔吐などの消化器系異常症状を呈する。HELLP症候群の出現率は0.5~0.9%で,その70%が妊娠中で第2三半期後半~第3三半期に出現し,残りは産褥期で48時間以内に出現することが多い。倦怠感に続いて上腹部痛(40~86%),嘔気・嘔吐(29~84%),頭痛(33~61%),高血圧(82~88%),蛋白尿(86~100%)を認めることもある。

    ▶診断のポイント

    妊娠高血圧腎症の症状と似ているが,15~20%は高血圧を認めないため注意する。2018年の日本妊娠高血圧学会の新定義により,「妊娠中・分娩時・産褥期に溶血(LDH高値)・肝機能障害(AST高値)・血小板数減少を同時に伴い,他の偶発合併症でないものをいう。いずれかの症候のみを認める場合は,HELLP症候群とは記載しない。HELLP症候群の診断はSibaiの診断基準に従うものとする」と定められた。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    HELLP症候群は,溶血・肝機能障害・血小板減少という血液データに基づくため,血液検査をしなければ診断できない。しかし通常,診断に至る数週間~数日前から血小板数減少やAT活性低下が始まり,その後急激にAST/LDH上昇が起こる。症状や検査値の変化からHELLP症候群への進行が否定できない場合には,繰り返し行って早期発見に努めることが重要である。

    また,類似疾患との鑑別が重要となる。臨床症状や血液検査所見が類似し,妊娠30週以降に急激に発症する肝機能不全に,急性妊娠脂肪肝(acute fatty liver of pregnancy:AFLP)がある。80%は高血圧がなく,約50%は血小板減少もない,急性肝不全〔肝機能異常,高度のAT活性低下(<60%),血小板数≧12万/μL,血中アンモニア上昇,低血糖,凝固因子不足によるPT延長など〕が特徴である。細血管内血小板血栓による血小板減少・溶血性貧血を認めるものに血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy:TMA)があり,脳神経症状優位の血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)や腎症状優位の溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)がある。

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