【質問者】
橋本浩平 札幌医科大学医学部泌尿器科学講座講師
【血清PSAグレーゾーン(3.0あるいは4.0〜10ng/mL)の患者において侵襲を伴う前立腺生検の効率的な適応決定に寄与する指標である】
前立腺癌は罹患初期には排尿症状をはじめとする特有な症状が認められず,早期発見には血清中腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(prostate-specific antigen:PSA)の測定が有用とされ,血清PSA値の基準値として4ng/mLが多く用いられています。血清PSAは人間ドックを含めた健康診断,住民検診,または排尿障害により医療機関を受診した際に測定し,異常値を呈する場合,精密検査である前立腺生検の適応を泌尿器科専門医が検討します。今回ご質問頂いたphiは,血清PSA基準値を超える患者において,侵襲を伴う前立腺生検の効率的な適応決定に寄与する指標であり,これについて解説します。
PSAは前立腺上皮の腺細胞で産生され,腺管に分泌される糖蛋白で,精液の液状化に寄与しており,精液中には0.5〜2.0mg/mLという高濃度で存在します。前立腺癌では,前立腺上皮細胞を裏打ちする基底細胞および基底膜の破綻が起こり,上皮細胞で産生されたPSAが腺外に漏出し,末梢循環系との接触が増加することで血中濃度が上昇することが前立腺癌患者におけるPSA上昇の機序とされています。phiはPSA前駆体である[-2]proPSA,遊離型PSA(free PSA),総PSA(total PSA)を組み合わせ,[-2]proPSA/freeP SA×√total PSAの数式に基づき算出される指標で,前立腺癌のリスクを判定するための補助手段として,感度および特異度が最適になるように考案されています。
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