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水腎症[私の治療]

No.5146 (2022年12月10日発行) P.48

小原 航 (岩手医科大学泌尿器科学講座教授)

登録日: 2022-12-08

最終更新日: 2022-12-06

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  • 水腎症とは,生成された尿が何らかの尿路閉塞による通過障害のためにうっ滞し,腎盂腎杯が拡張した状態とされる。水腎症の原因には先天性と後天性があり,閉塞時期により急性と慢性に大別される。特に閉塞が高度で急性発症の場合,側腹部等の疝痛発作,尿路結石を伴う尿路感染による敗血症,電解質異常を伴う腎後性腎不全を呈し緊急処置を要することがあり,注意する。

    ▶診断のポイント

    水腎症の原因および全身状態の評価を行う。上部尿路の閉塞による高カリウム血症を伴う腎後性腎不全症例や,バイタルサインが不安定な尿路感染併発症例に対しては尿管ステント留置や腎瘻造設術が,また尿閉による腎後性腎不全に対しては尿道カテーテル留置や膀胱瘻造設などの緊急処置が必要になることを念頭に置いておく。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    水腎症の原因は多岐にわたるため,既往歴を含む詳細な病歴の聴取,内服薬の確認,発症年齢や自覚症状の有無などを考慮して原因疾患を推定することが重要である。ここでは主に成人発症例について言及する。

    腹部超音波検査やCT検査で両側水腎症を認めた際には,腎後性腎不全をきたすことがあるため血液検査を行う。特に,両側の上部尿路結石による腎後性腎不全に対しては,緊急尿管ステント留置を行う。また,高齢者や糖尿病を有する症例で,前立腺疾患や神経因性膀胱などに起因する慢性的な残尿により腎後性腎不全を呈する場合は,導尿や尿道カテーテル留置を行う。緊急性がない場合は,CT検査や逆行性腎盂造影(retrograde pyelography:RP)検査で水腎症の評価および閉塞の原因を検索し,原因に基づいた治療方針をたてる。

    片側水腎症で,患側の側腹部痛や悪心・嘔吐を伴う急性発症例では尿路結石が疑われるため,腎膀胱部単純X線撮影(kidney ureter bladder:KUB)や腹部CT検査で結石の存在を確認する。疼痛への対応として,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)を使用し,適宜非麻薬性中枢性鎮痛薬を追加する。

    悪寒・発熱を呈する症例では,腎盂腎炎などの尿路感染症を合併している場合があり,血液検査や尿検査で炎症反応や膿尿を確認する。特に日常生活動作(ADL)不良の高齢者,糖尿病やステロイド投与中の患者は,臨床症状や血液生化学所見に乏しい場合もあるため,注意を要する。難治性尿路感染症例やバイタルサインが不安定な敗血症を呈する際は,緊急尿管ステント留置もしくは経皮的腎瘻造設が必要となる。

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