小児肥満のほとんどを占める原発性肥満(単純性肥満)は原因として明らかな疾病を確認できないものである。一方,中枢神経系や内分泌系の疾病に肥満が伴うものを二次性肥満(症候性肥満)と呼ぶ。成長率低下を伴う場合や乳児期発症の場合は二次性,遺伝性も考慮する。
「小児肥満症診療ガイドライン2017」1)に基づく。適応年齢は6~18歳未満である。肥満は肥満度が+20%以上,かつ体脂肪率が明らかに増加した状態(男児:年齢を問わず25%以上,女児:11歳未満は30%以上,11歳以上は35%以上)と定義される。一方,肥満症は肥満と関連する健康障害の合併,または合併が予測され,医学的に肥満を軽減する必要がある状態と定義される。
初診時は二次性肥満を鑑別することが重要だが,家族の機能不全や不登校などの社会的問題,本人や家族の発達障害を背景とする場合も少なくなく,個人個人に合わせた対応が必要となる。体重管理には食事療法,運動療法に加えて,行動療法が重要である。高度な健康障害を有する場合には減量が必要となるが,多くは体重の維持(増やさないこと)を目標とする。肥満と関連する健康障害は別個に対応する。
注意欠陥・多動症(ADHD)に使用されるメチルフェニデートのように副作用として食欲が抑制される薬剤はあるが,食欲抑制薬(抗肥満薬)として小児に適応のある薬剤は現時点では存在しない。関連する健康障害の多くは体重管理で改善するが,2型糖尿病,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD),脂質異常症,高血圧に対しては,小児に適応のある薬剤が使用可能である。高尿酸血症は,痛風や一部の疾患を除いて,尿酸降下薬を使用する積極的介入の効果に関するエビデンスはない。明らかな高血圧がある場合には,内分泌性高血圧など二次性の原因検索が必要である。抗肥満薬として海外を中心に治験が進行中であるが,日本でもGLP-1受容体作動薬の成人での臨床試験が進行中である。
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