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喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)[私の治療]

No.5148 (2022年12月24日発行) P.40

松山崇弘 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学)

高木弘一 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学)

井上博雅 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学教授)

登録日: 2022-12-21

最終更新日: 2022-12-20

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  • 気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,異なる原因や機序によって病態が形成され,両者の症状や気道の炎症,気流閉塞の特徴なども異なっている。しかし,慢性の気流閉塞を示し,喘息の特徴とCOPDの特徴を併せ持つ場合があり,このような病態を喘息とCOPDのオーバーラップ(asthma and COPD overlap:ACO)と呼ぶ。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    ACOの症状は,主に咳,痰,喘鳴,息切れ,呼吸困難であり,いずれも慢性気道疾患に共通しており,特徴的なものはない。喘息と診断されている患者で喫煙歴があり,非発作時にも慢性的な咳・痰がある上,年単位でみると呼吸困難が進行・悪化している場合はACOを疑う。また,COPDらしい慢性的な労作時呼吸困難はあるが,症状の大きな変動があり,治療により症状が顕著に軽減される場合はACOを疑う。

    【検査所見】

    喘息とCOPDいずれの疾患においても,気流閉塞の存在を証明するためにスパイロメトリーは必須の検査である。閉塞性換気障害があれば短時間作用性気管支拡張薬吸入により可逆性を評価し,短時間作用性気管支拡張薬吸入後の1秒率(FEV1%)が70%未満であれば,持続性の気流閉塞があると判断する。

    COPDの特徴を示す検査所見としては,胸部CTにおける気腫性変化,肺拡散能障害(%DLco<80%あるいは%DLco/VA<80%)がある。

    喘息の特徴を示す検査所見としては,呼気一酸化窒素濃度(FeNO)>35ppb,短時間作用性気管支拡張薬吸入前後の気道可逆性(FEV1>12%かつ>200mLの増加),末梢血中好酸球>5%あるいは>300/μLがある。IgE高値(総IgEあるいは吸入抗原に対する特異的IgE)も参考になる。最終的には,咳,痰,呼吸困難を訴える他の疾患を,問診,身体所見,胸部画像所見などで除外した上で診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ACOの治療指針については,喘息やCOPDそれぞれの治療指針を参考に,両者に有効な治療を併用することが推奨される。まず,禁煙,喘息の増悪因子の回避など,両者の危険因子を回避することが必要である。喘息の薬物療法は吸入ステロイド(ICS)が第一選択薬であり,COPDの治療では長時間作用性抗コリン薬(LAMA),長時間作用性β2刺激薬(LABA)あるいはLAMA/LABA配合薬などの気管支拡張薬が主体である。よってACOでは,ICSと気管支拡張薬の両者を使用する。

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