「膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛,圧迫感または不快感があり,尿意亢進や頻尿などの下部尿路症状を伴い,混同しうる疾患がない状態」を「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群」と呼ぶ1)。このうち,特徴的な発赤病変であるハンナ病変を膀胱内に認めるものをハンナ型間質性膀胱炎,それ以外を膀胱痛症候群とし,両者を区別する1)。ただし,膀胱痛症候群は保険病名ではないため,保険診療上は前者を「間質性膀胱炎(ハンナ型)」,後者を「間質性膀胱炎」として区別する。診療ガイドライン上の疾患名と保険病名との乖離はしばしば混乱をもたらすが,将来的には保険病名の改正による収束が期待される。原則的には,膀胱の慢性炎症性疾患である間質性膀胱炎とは,狭義にはハンナ型間質性膀胱炎〔間質性膀胱炎(ハンナ型)〕のみを指し,膀胱痛症候群(間質性膀胱炎)はまったく別の病態(非炎症性疾患)であることに留意されたい。
類似症状を呈する他疾患が除外された場合は膀胱内視鏡検査を行い,ハンナ病変の有無を必ず確認する。
診断にあたっては,ハンナ病変の有無によりまったく異なる疾患群を治療することになるため,ハンナ病変の有無を峻別することが何よりも肝要である。ハンナ型間質性膀胱炎は膀胱の免疫性炎症性疾患であるのに対し,膀胱痛症候群は非炎症性疾患であり,神経・免疫・内分泌的な異常との関連が示唆されている2)。いずれも病因はいまだ不明であり,根治治療は確立されていないため,対症療法が中心となる。
ハンナ型間質性膀胱炎に対しては,経尿道的なハンナ病変の切除・焼灼術と膀胱水圧拡張術の併用が第一選択となる。本手術はハンナ病変の確認と組織学的評価のため,初発例には必須である。高い奏効率を誇るが,多くは術後1,2年で症状が再燃する。再燃時には上述の手術を再び行うか,ジムソⓇ(ジメチルスルホキシド)の膀胱内注入療法を行う。ジムソⓇ不応症例で,初回手術時に膀胱粘膜生検の組織学的慢性炎症性変化(膀胱粘膜へのリンパ球形質細胞浸潤や間質の線維化・浮腫など)を認めた症例にはステロイドの投与も検討する。頻回に経尿道的手術を施行することで膀胱容量を減少させる懸念があるため3),基本的には保存的治療を中心にして,長期的マネジメントを行うことが肝要である。
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