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腎性貧血治療における鉄投与の考え方 【血清フェリチン値とトランスフェリン飽和度を指標として投与量を判断】

No.4825 (2016年10月15日発行) P.56

庄司哲雄 (大阪市立大学大学院医学研究科血管病態制御学准教授)

西 慎一 (神戸大学医学部腎臓内科教授)

登録日: 2016-10-14

最終更新日: 2016-10-14

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  • 腎性貧血の治療では赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent:ESA)とともに鉄剤投与も行われますが,鉄過剰は生命予後の点からも注意が必要ではないかとも言われています。何を指標にして,どのような治療が推奨されるのか,神戸大学・西 慎一先生にお伺いします。

    【質問者】

    庄司哲雄 大阪市立大学大学院医学研究科 血管病態制御学准教授


    【回答】

    (1)鉄投与に関する基本的知識
    腎性貧血は,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に伴い腎からのエリスロポエチン産生が低下している状態に,CKDに伴う慢性炎症,酸化ストレス,赤血球寿命短縮などが加わり発症する貧血です。さらに,鉄欠乏があればCKD患者の貧血は悪化します。鉄は造血に必要な金属ですが,投与する量が多ければCKD患者のヘモグロビン(Hb)値は必ず上昇します。つまり,鉄投与に関しては,鉄剤低反応性という現象はありません。ただし,過剰な鉄剤使用は,肝臓以外にも心臓,膵臓,骨髄など様々な臓器に沈着することで,臓器傷害や易感染性をまねき,生命予後を悪化させます。

    (2)鉄欠乏の診断
    鉄欠乏の判定は簡単ではありません。正確には骨髄内の鉄量測定が理想です。一般的には,肝臓内の貯蔵鉄マーカーである血清フェリチン値を利用します。フェリチンは巨大蛋白で内部に多くの鉄分子を含有できます。炎症があると肝臓で産生され,血中濃度が上がります。このようなフェリチン蛋白には,あまり鉄分子が含まれていないとも言われます。よって,CKDという慢性炎症状態では,血中フェリチンは必ずしも貯蔵鉄の正確な指標とはなりません。そのため,非CKD症例より高めのフェリチン値を鉄欠乏と判断するカットオフ値にしています。問題は,どのレベルに設定するのが妥当かです。「急性腎障害のためのKDIGO診療ガイドライン」はじめ,わが国の腎性貧血ガイドラインも,フェリチン値100ng/mLをカットオフ値としてきました。しかし,関節リウマチなど他の慢性炎症性疾患では,鉄欠乏カットオフ値を50ng/mL前後と設定しています。

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