住血吸虫の成虫は体長1~2cmで,血管内に寄生する1)。日本住血吸虫,マンソン住血吸虫,ビルハルツ住血吸虫などが知られ,中間宿主の貝より水中に遊出した幼虫(セルカリア)がヒトや家畜などに経皮的に感染する。日本住血吸虫症やマンソン住血吸虫症では,成虫は主に腸間膜静脈を含む門脈系血管に寄生し(これらは腸管系住血吸虫症と呼ばれる),ビルハルツ住血吸虫症は尿路生殖器系住血吸虫症とも呼ばれ,成虫は主に小骨盤内の静脈に寄生する。いずれも血管内で産卵し,虫卵は毛細血管を塞栓して肉芽腫性炎症から臓器線維化をきたす。日本住血吸虫症では肝硬変や直腸粘膜障害をきたし,ビルハルツ住血吸虫症では泌尿生殖臓器障害,とりわけ血尿などの尿路系症状をきたすことが多く,膀胱癌発症の原因となることが明らかとなっている。
日本住血吸虫症は,かつて国内では甲府盆地,広島県片山地方,筑後川下流域,静岡県沼津地域,利根川流域などに流行地が存在した。今日では流行は終息しているが,今なお高齢の既感染陳旧性症例に遭遇することがある。マンソン住血吸虫症やビルハルツ住血吸虫症は,流行地は主にアフリカや中東に限定され国内には存在しないが,海外流行地を訪れ遊泳などで感染する日本人の輸入症例がある。
住血吸虫の生活史には特定の淡水産巻貝が必要であり,流行地はその貝の分布地に一致し風土病の側面がある。経皮感染することも特徴である。したがって,居住地歴や行動歴の聴取は重要である。一般的に,腸管系住血吸虫症では,糞便より虫卵の検出を直接塗抹あるいは遠心沈殿集卵法(ASMⅢ法など)で試みる。また,直腸粘膜の生検も有用である。一方,尿路生殖器系住血吸虫症では主に尿中の虫卵の検出に努める。膀胱壁の生検も有用である。生検材料中に虫卵が確認できた場合には確定診断となるが,遠い過去の感染でも虫卵は発見されるので,病歴や症状と合わせて幼虫包蔵卵が発見されるような現感染と区別する必要がある。
なお,血液検査では高IgE値,好酸球増多は必発とは限らない。また,血中抗体検査では,虫種の確定はできないが感染既往の推定の参考になる。最近は,PCR法やLAMP法を用いた遺伝子診断による開発が試みられているが,一般実用化には至っていない。
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