特発性中枢性肺胞低換気1)は,指定難病230の「肺胞低換気症候群」2)の一部に含まれるため,併せて解説する。わが国の指定難病である肺胞低換気症候群には,先天性中枢性肺胞低換気症候群(congenital central alveolar hypoventilation syndrome:CCHS),特発性中枢性肺胞低換気(idiopathic central alveolar hypoventilation:ICAH)と肥満低換気症候群(obesity hypoventilation syndrome:OHS)の一部が含まれる。OHSの一部とは,覚醒時の動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が50mmHgを超えるOHSである。いずれの病態も睡眠中の低換気を共通病態として持っている。睡眠中の低換気とは,以下の①または②の状態を示す。
①PaCO2(代替PCO2:呼気終末二酸化炭素分圧または経皮的二酸化炭素分圧)が55mmHgを超えて10分以上持続する。
②PaCO2(代替PCO2)が覚醒時仰臥位と比較して睡眠中に10mmHg以上上昇し,50mmHgを超えて10分以上持続する。
小児の場合は「総睡眠時間の25%超において,PaCO2(代替PCO2)が50mmHgより高い場合に低換気と判定する」とされている。PaCO2の代替として主に使用されるのは,現状では経皮的二酸化炭素分圧測定である。
CCHSは睡眠関連低換気があり,ほとんどの症例でPHOX2B遺伝子変異がある。ICAHも睡眠関連低換気があるが,原因となる病態(肺実質や気道疾患,肺血管病変,胸壁疾患,薬物使用,神経・筋疾患,肥満など)がなく,さらにCCHSではない場合を言う。また,OHSとはBMIが30kg/m2以上で覚醒中のPaCO2値が45mmHgを超え,低換気の主たる原因が,肺実質や気道疾患,肺血管病変,胸壁疾患,薬物使用,神経・筋疾患,肥満などではなく,さらにCCHSやICAHではない場合を言う。なお,OHSは90%以上で閉塞性睡眠時無呼吸を合併するが,現状の指定難病の肺胞低換気症候群に該当するOHSは,CPAP治療ではPaCO2値が50mmHg以下にならないものを言う。頻度的にはいずれも稀であり,国内の患者数はICAHは100人未満で,CCHSおよび指定難病のOHSは併せて3000~5000人以下ではないかと考えられている。
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