【質問者】加藤 忍 かとう腎・泌尿器科クリニック院長
【尿道狭窄を予防することは難しいので,十分な術前リスク説明と早期の尿道形成術が肝要である】
経尿道的手術は前立腺肥大症,膀胱腫瘍,尿路結石などに対する標準的な外科的治療として広く普及しています。尿道狭窄は経尿道的手術の代表的な晩期合併症で,圧倒的に男性に多く発生します。この数十年間で手術手技や内視鏡デバイスが格段に進化したにもかかわらず,尿道狭窄の発生頻度は残念ながらほとんど改善していません1)。
経尿道的手術後の尿道狭窄は複合的な要因により発生しますが,尿道内腔に比して太い内視鏡による機械的な摩擦が最も主要な原因と考えられています。つまり,尿道狭窄の発症は経尿道的手術の宿命であり,確実に予防する手段はないということです。手術時間をできるだけ短縮して機械的な摩擦を軽減する配慮が必要であることはもちろんですが,手術適応を厳密にして必要性の低い手術をできるだけ行わないようにすること,術前に尿道狭窄が続発しうることを患者に十分説明しておくことが,より重要と考えます。また,前立腺肥大症の経尿道的手術を検討する際には,術前に既存の尿道狭窄の有無を内視鏡や尿道造影で確認しておくことを推奨します。 “振り返ってみると,排尿障害の原因は前立腺肥大症ではなく尿道狭窄だった”という例が散見されるからです。
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