電撃症では,生体内に流れた電流で発生するジュール熱による体内損傷と,高圧電流に接近した際に発生するアーク放電による体表面の熱傷を考慮する。感電による筋肉の強い攣縮や,跳ね飛ばされた際に受傷する外傷にも注意が必要である。
電撃の強さは直流より交流,交流では周波数が低いほうが危険とされている。このため,感電した際の電圧と電流,直流か交流か,交流の場合は周波数の情報が重要である。
通電経路を示す電流の入口(電源との接触部)と出口(接地部),感電時の意識障害の有無や感電時間,合併損傷の可能性を示す受傷時の状況(転倒・転落,跳ね飛ばされた)について,本人または目撃者から聴取する。
バイタルサインをチェックしながら心電図モニターを開始する。感電により現場で心室細動になることが多いが,洞調律であっても受傷後24時間以内は心室細動や心房細動,非特異的ST変化が起こりうるため,心電図モニター装着の上,経過観察が必要である。心室細動は手から下肢への通電経路で最も発生頻度が高いと言われる。
電源との接触部と接地部は,ジュール熱により皮下に達するⅢ度熱傷になる。電気抵抗が低い皮下組織や筋肉,血管にはジュール熱によって広範な損傷が生じるが,体表面の変化が少なく,受傷直後にはわからないことも多いため,通電経路に沿って疼痛や神経学的所見を丁寧にとることが重要である。アーク放電では体表面に広範囲のⅡ度熱傷を形成する。
感電による筋肉の強い攣縮で電源から手が離せなかった場合には,筋肉が付着する関節や椎体に骨折を生じることがある。感電して跳ね飛ばされた場合や高所からの転落では,頭部や体幹の外傷にも注意が必要である。
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