肺を守るアンチプロテアーゼであるα1-アンチトリプシン(α1-antitrypsin:AAT)の欠乏によって,若年より肺気腫などを生じ,息切れ等の症状を呈する常染色体劣性遺伝性疾患である。重症度により治療が異なる。
進行例では呼吸困難,軽症では労作時の呼吸困難から始まり,症状が進行する。
呼吸機能検査にて気管支拡張薬吸入後に1秒率が70%未満,胸部画像所見にて閉塞性換気障害の発症に関与すると推定される気腫病変,気道病変を認める。α1-アンチトリプシン欠乏症(α1-antitrypsin deficiency:AATD)は,血清AAT濃度<90mg/dL(ネフェロメトリー法)と定義され,軽症(血清AAT 50~90mg/dL),重症(血清AAT<50mg/dL)の2つに分類される。必要に応じて遺伝学的検査を行う。
まず血清AAT値の重症度と臨床的な患者のAATD重症度の二軸で考える。疾患としてのAATD重症患者数は限定されるが,軽症患者の頻度はそれよりも高く認められる。比較的若年の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では,血清AAT濃度を測定することが望ましく,早期の発見につながる。軽症症例では画像のみで発見され,息切れに慣れて自覚していない場合もある。家族歴を含めた問診を丁寧に行い,COPDに準じた治療を行う。血清AAT値が異常である場合は,専門医への紹介が望ましい。
COPDに準じた治療を行う際に,安易に吸入ステロイドを使用しないこと。
喫煙は本症の病態に悪影響を及ぼす。特に軽症者では喫煙者も少なからず存在し,寛容にならず禁煙指導を徹底すべきである。
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